2013年3月30日土曜日

若松孝二を支えた役者たち7名集結!

本日、テアトル新宿で
近年の若松組の現場に参加した個性派俳優が
7名勢揃いした。

半蔵の母親、トミ役の増田恵美、
年若い半蔵を預かった久市の女房カネ役の並木愛枝、
三好の運命を狂わせていく人妻芳子役の月船さらら、
路地一番のウワサ好きなミツ役の原田麻由、
半蔵の男ぶりにのめり込む後家の初枝役の安部智凛、
三好がアニと慕う盗人の直一郎役の岩間天嗣、
半蔵の山仕事仲間、ジンノスケ役で助監督兼の瀧口亮二。

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並木は『ある朝スウプは』という出演作を観た若松孝二からの
熱烈なコールを受けて『実録・連合赤軍』で永田洋子を演じた実力派。
その同じ現場を共にした安部智凛が、レンセキ初日に
履いていた靴の事で監督から「お前は今日でクビだ!」と大激怒され、
助監督の機転で現場がなんとか回っていった事を語り、
「監督って、助監督が自分の靴を脱いで渡した様子を見ていて
 本当はクビにするつもりなんかなかったかもしれないけれど
 怒りで現場をつくり、またその怒りに対してスタッフも含めて
 現場の人間がどう動いていくかをしっかり見てたと思う」と並木。

若松孝二の激怒エピソード、『11.25自決の日』にも出演し
三島と森田を介錯する古賀を演じた岩間天嗣が
三島の現場で、衣裳部の指示通りに学ランを着ていったところ
「お前、それは違うだろう!衣裳部が着ろと言われたら
 お前はそれを着るのか!それでいいのか!」と怒鳴られた事を語り
「衣裳部が決めたものを着た!」と怒られたのは俳優人生初だったと話し
会場の笑いを誘った。

「それでも、監督って、どうしても次も出たいんです!と言えば
 きっと出してくれるだろうって思える、そういう人でしたよね。
 相手との関係性をとても大切にしていて」と原田麻由が語ったのは
父、原田芳雄氏と監督との対談を書籍にしたいと編集者が
監督に電話した時のエピソード。
「電話に直に出た監督は、すぐに、ああ、いいよいいよと即答して
 後ほど、企画書をお送りします、と編集者が言うと、
 『そうやって、自分が正しい仕事をしてます、というやり方はやめろ。
 俺が、芳雄さんとの関係でいいって言ってるんだから、いいんだよ』と
 いきなり怒り出したんです」という。
四角四面に、自分たちの企画書というパターンではなくて
「俺と芳雄さん」といった関係性での物事のありようを
感覚的に大切にしてきた若松監督らしいエピソードだが
編集者もビックリしただろう。

映画は若松組が初めてだった増田は、若松組の常識が
他の現場では通用しない事を知って驚いた事を語り、
どうしても『千年の愉楽』に出たいと、何度も直談判の末、
助監督見習い兼、という事で、キャスティングに加わった事を
瀧口が語った。

とにかく、俳優にもスタッフにも、あるいは第三者にも
自分の頭で考えろと言い続けた若松監督の原動力は『怒り』と『直感』。

「とにかく早撮りで、ナイターシーンを待ちきれず
 『夜、まだか!』とスタッフに対して怒ってました(笑)。
 結局、夜になるのを待ちきれずに撮り始めて」と月船さらら。

「綺麗な目をした半蔵に、こんな事を言わせたくない」と
そのシーンの撮影数分前に、大幅にシナリオがカットされたエピソードも。

30分のトークはあっという間。
ほとんどのエピソードには、常に笑いがあった。
監督の理不尽さも強引さも情の深さもせっかちさも
全て、思い出すとみんなを笑顔にしてしまうのだ。

トークを終えてロビーに出ると、
次の上映を待っているお客さまの中に
レンセキで録音をしてくださった大御所、久保田幸雄さんの姿があった。
懐かしい思いがこみ上げ、嬉しく挨拶をさせて頂く。

次のテアトル新宿イベントは7日(日)11時の回上映後。
菅孝行氏と脚本の井出真理氏による骨太なトーク。
「<路地>の向こうに広がるもの」。

4月5日6日は、東北フォーラム6劇場を佐野史郎が回る。
4月5日
フォーラム八戸/フォーラム盛岡/フォーラム仙台
4月6日
フォーラム東根/フォーラム山形/フォーラム那須塩原

まだまだ続く、『千年の愉楽』キャラバン!

2013年3月26日火曜日

3月25日(日)「千年の愉楽」染谷将太さん舞台挨拶レポート 名古屋シネマスコーレ

昨日3月25日(日)若松孝二最後の映画を若松孝二がつくった
映画館シネマスコーレで鑑賞しようと、「千年の愉楽」舞台挨拶に
たくさんのお客様が来場されました。

告知が2日前に発表され急遽決まった、この舞台挨拶。
それでも朝からシネマスコーレ前に列ができはじめ、
1回目、2回目ともにほぼ満席となり大盛況でした。

舞台挨拶をしていただいたのは染谷将太さんです。



映画館で映画を鑑賞するのが楽しみという染谷さん。
ご自身が出演されている作品は何度も観てしまうほどだそうです。
今回、シネマスコーレには初めて来られたとのことでした。

舞台挨拶では「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」でオーディション
を受けて、監督から年が若いとのことで落選してしまった悔しいエピソードや、
今回の「千年の愉楽」に出演が決まる経緯など若松作品に出演できた
嬉しさを語っていただきました。

若松監督はとにかく早撮りで、夜行バスで朝5時に現場に到着して、
その日の午前中には撮り終わってしまう、驚異のエピソードも飛びでました。
出演されてるシーンではリハーサルもほとんどなく、
1テイクのシーンもあったそうです。

今後、出演してみたい監督はいますか?のMCの問いには、監督と呼ばれている方の
作品にはどんどん出演していきたい。と熱意が伝わる頼もしい発言も飛びだし、
次の世代を担う俳優の発言に、場内は盛り上がっていました。

そして2回目の上映終了後、2度目の舞台挨拶が行われたのですが、
染谷さんは客席から登場!なんと「千年の愉楽」の上映を観ていらしたのです。
こんなところにも、映画を愛されている彼らしさがでていました。

「千年の愉楽」はシネマスコーレにて4月12日(金)まで上映いたします。

3月23日(土)~29日(金)
①10:30~ ②12:40~ ③18:10~ 1日3回上映。

3月30日(土)~4月12日(金)
①10:00~ ②16:10~ 1日2回上映

物販はパンフレット 1000円 サウンドトラック 2100円
にて好評発売中です。

2013年3月19日火曜日

「話、まとめるのやめてください」…思いが炸裂した岡山トークイベント

作品公開2週目に突入した3月17日(日)。
4月6日(土)に公開を控えた岡山県のシネマ・クレール丸の内で
先行上映会および、井浦新さんと高岡蒼佑さんの舞台挨拶が行われました。

本日は、立ち見も合わせて150名を超える観客がクレールに。
何より、女子トイレで化粧直しをする行列。
今だかつて見たことのない劇場の風景に、劇場スタッフもびっくり…。

 


 

 

作品上映後、井浦さんと高岡さんが登壇。
大きな拍手、そして黄色い悲鳴。
最前列の観客から、井浦さんに花束がさっそくプレゼント。
それに喰い気味で、「僕も、お花ほしいな…」と、高岡さん。
作品の三好同様、母性本能をくすぐるセリフ、たまらんです!

そんな掛け合いをしながら、
撮影現場の様子や監督とのやり取りを語り始めるお二人。
監督との思い出に話が移り、井浦さんは、
「今まで、かっこつけて役者をやってた自分に、
本当の意味で映画を作る楽しさ、演じる楽しさを教えてくれたのが、
若松監督だった」と。
そこから、どんどんトークに熱が帯びていく井浦さん。
映画の在り方や俳優の在り方…、監督から受け継がれたもの、
そして、今後自分が受け継いでいくものを語るその姿は、
まさに若松監督が乗り移ったよう。
「役者論を語るヤツって、俺大嫌いなんですよ」と言い放った井浦さんに
完全に重なる若松監督の姿。
以前、『キャタピラー』のインタビューで激を飛ばしていた監督の姿そのもので、
現場にいた自分は涙が出そうに。
その熱さは、舞台挨拶終了後、
「俺、今日は変なスイッチ入っちゃった」と本人も驚いていたほどでした。


井浦さんからは、『千年の愉楽』だけでなく、監督の過去作品に関する話も。
「僕は、監督の作品の中で、『寝盗られ宗介』が一番好きです」
というコメントに、会場からは「おぉ~!」と歓声が。
会場のファンが興奮するのも当然。
と言うのも、実は『寝盗られ宗介』主演の原田芳雄さんは、
奥様の実家がある岡山と、並々ならぬご縁があるのです。
昨年秋には、有志によって「原田芳雄映画祭」が開催。
そこでも、『寝盗られ宗介』は上映されていたのです。
そんな原田さんの話が、井浦さんの口から直接語られ、
会場の映画ファンは言葉にできない喜びに包まれました。



そして、あっという間に所定時間が過ぎ、司会が最後の締めにかかろうとしたとき、
「話、まとめるのやめてください」と、司会の静止を振り切る井浦さん。
会場からはもちろん大きな拍手! 
その後、司会者と井浦さんがあわや乱闘騒ぎに…というのは冗談ですが、
映画の魅力を、若松監督の思いを伝えるという使命をおびた井浦さんの
強い意志が感じられました。
この一言は、2人がお目当てだった多くの観客が、
本当の意味で若松映画ファンになった瞬間でもありました。

さらに続くトークライブ。
高岡さんのキャスティングについては、お二人からこんな話も。

高岡「正直、『千年の愉楽』のお話をいただいたとき、
プライベートでいろいろあった時期だったんで、
お断りしようって思ってたんですよね。
寺島しのぶさんが僕を指名してくれたって説もあったんですけど、
実際俺なんで呼ばれたんですかね??(笑)」
井浦「監督って、見えない圧力や権力に虐げられている人にすごく共感するんだよ。
ワイドショー好きだったからな~。当時、ワイドショーに高岡がいっぱい出てたからね」
高岡「そう言えば、監督に『俺、お前の演技見たことないから』って
言われましたよ(笑)。そういうことだったんだ」

その後、高岡さんの口からは、過去に世間を賑わせたtwitter騒動の件も。
普通なら避けてしかるべき話題にも関わらず、
当時の様子や報道に対する違和感も飄々と語ってくれました。
自分が正しいと思ったことをそのままストレートに言える、
若松監督のように一本筋が通った一面を、高岡さんにも感じました。


最後に、はるばる兵庫県からやってきた男子高校生に井浦さんから
「この映画、どうだった?」と逆質問も。
「最初の井浦さんのシーンはインパクトがあって印象的だった。
そのあと、オバアの回想として3人の男たちの生き様が描かれていた。
とても分かりやすかった」と、大人顔負けのすばらしい感想が。
井浦さん&高岡さん、そして会場の観客から感嘆の声があがったのは
言うまでもありません。
そのほかにも、作品について多くの観客と語り合い、
最終的に30分の舞台挨拶が、1時間を超えるロングトークライブに。
岡山の映画ファンにとっては、至福の時間となりました。


岡山を発つ直前に、井浦さんはJR岡山駅構内にある
岡本太郎氏の陶壁画「躍進」のもとにも。
短い時間でしたが、シネマ・クレール丸の内での舞台挨拶とともに
岡山での思い出を残していただけたようです。




『千年の愉楽』岡山公開は、4月6日(土)より、シネマ・クレール丸の内にて。
http://www.cinemaclair.co.jp/

さらに、今回の『千年の愉楽』先行上映会での舞台挨拶の
完全版&井浦新さん・高岡蒼佑さんインタビューは、
4月上旬に タウン情報おかやま 
http://www.vis-a-vis.co.jp/tjo/
で公開予定です。ぜひこちらもご覧ください。

※取材・撮影/タウン情報おかやま 河野愛

2013年3月18日月曜日

TKPシアター柏に、あの面々が勢揃い!

16日(土)、公開2週目に突入したその日、
1週間前に佐野史郎、高岡蒼佑らが挨拶したTKPシアター柏に
アツい面々が勢揃いした。

 

 

最初は「千年の愉楽」上映後舞台挨拶に
井浦新と大西信満が登壇。
それぞれにワンシーンしか出ていない二人が
作品との出会いを最大限に演出するために、
わずか15分という短い時間ながら挨拶に立った。
三島のイン前に骨折という大怪我をした井浦と同じく
千年のイン前に半月板損傷という大怪我をした大西。
しかし、作品づくりに、わずかでも関わったという事
作品に、少しのひっかき傷でも残したという事が、
遺作となった今回においては、しみじみ、良かったと思うのである。
そして、「千年の愉楽」に引き続いて上映されたのが
「11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち」。
3スクリーンあるTKPシアターのうち1スクリーンは
今週末まで、「千年の愉楽」含む若松孝二の近作を
代わる代わる上映している。
ここのトークで久しぶりに参戦したのが
森田必勝演じる満島真之介。
「おしん」の豪雪地帯でのロケを終えて
東京に戻って来たばかりだという。
この3人が揃えば、話しが弾まない訳がない。
会場からも次々と挙手が続く。
「割腹シーンのリアルさ、何を参考にしたのか」
「三島は本当は生きて小説を書きたかったのではないか」
「割腹シーンを自ら演出して演じ、そして実行してしまった衝撃」
「撮影で辛かった事、監督との思い出は」
何も参考にするまでもなかった割腹シーンの緊張感。
「腹を切って苦しむ三島さんの背中を見つめながら 
 内蔵まで飛び出しそうな思いでいた。早くラクにしてあげたかった」
 と語る真之介、「早いんだよバカ!新の顔を見せたいんだよ!」という
監督からのダメ出しに、「お前に俺の気持ちがわかるか!」という
人生初の反抗心を抱いた凄まじい形相を、
ぜひ、メイキング映像で見て笑ってやって欲しいと語った。
いくつものトークを経て来た、三島の公開の日々を思う。
森田を演じていた頃の、感情を剥きだしにしていた真之介が
今は、いくつもの役を生きて来た堂々たる役者の顔をして
お客さまの前に立ち、作品や思いを話している。
その真之介を、出番のない日にも現場に通い続けて
キャメラの向こう側からサポートし続けてきた大西。
あるいは、三島を演じる背中を見せてきた井浦。
「三島さんはきっと、小説家としての思いはあっただろうと
 僕も思います。
 森田さんは、国を憂う、ただ1点で、心で行動したけれども
 三島さんは、その憂いに加え、表現者としての思いもあったはず。
 心と頭で考える人であり、行動による作品とも捉えられる」(井浦)
「走るシーンの滑稽さは、あの当時、足を骨折していて
 走れる状況ではなかったという裏側の事情はあったけれども
 カンヌではあのシーンで客席から笑いが起こったし
 三島さんの下半身の弱さを表現する上では、結果的に良かったと
 監督は満足していた。
 剥きだしのひたむきさは、美しくもあるけれど、一周してしまうと
 愛情を抱きつつも笑ってしまうような滑稽さも感じるのが人間」(井浦)
「人が本当に集中する時というのは、力んだりするのではなくて
 ここまで静かなものなんだ、という事を三島を演じる新さんの姿で知った。
 俺ができるのは、大丈夫か?と隣で真之介を見つめる事だった。
 静かな新さんの情熱、壊れそうな真之介の情熱、対照的な2つの情熱を
 間近で見つめ続けた得がたい経験だった」(大西)

劇場の方の不安そうな視線を遮りつつ、
時間を超えて話し続けた3人。
続けて、ロビー脇の書籍ブースにてサイン会を行った。
長蛇の列をなすお客さまたちの手には「11.25自決の日」
「実録・連合赤軍」「海燕ホテル・ブルー」など
それぞれの思いの詰まったガイドブックが。
問いかけに答え、写真撮影に応じ、握手に応じながら
丁寧にサインをして感謝を述べる3人。

こうして、駆け足ではあったが、柏TKPシアターにて
10日に引き続き、2日目のトークイベントが終了した。
足をお運び下さったお客さま、ありがとうございました。
「千年の愉楽」を含む、若松作品特集上映は、今週金曜までです。
この同じ日、高岡蒼佑は、関西の4つのシアターを回って
トークイベントをこなしていた。
そして、翌17日(日)には、高岡、井浦の2人が
広島と岡山の特別先行上映の舞台挨拶へ。
立ち見も出るほどの賑わいだったという岡山では
司会者の制止も振り切って、大幅30分オーバーのトークが
繰り広げられたという。
まるで、若松孝二がその場に降りてきたかのようだったという
そのトークの模様は、近日、岡山の劇場からレポートが届き次第
ブログにアップする予定。
いよいよ、公開関連イベントも残り少なくなってきた。
好評だった「若松孝二を支えた女優たち」トークも
形や構成を変えて、新宿で開催できないか検討中。
詳細が決まり次第、告知していきます。
4月5日6日は、佐野史郎がフォーラム系の劇場を回る
怒涛の東北ツアーへ。
地を這うように、若松組の公開は、次なる一手を模索中。
乞うご期待。

若松組初の試み、女優魂込めた女子トーク

この週末は、全国各地でアツいイベントが繰り広げられた。
その皮切りになったのは、15日(金)の夜、
銀座のど真ん中、ヒューマントラストシネマ有楽町にて。

若松組初の企画
「若松孝二を支えた女優たち」による女子トークイベント。
「千年の愉楽」が初の若松組となった原田麻由、月船さらら
「海燕ホテル・ブルー」ヒロイン役だった片山瞳、
そして「実録・連合赤軍」以来、常連となった安部智凛の4人が
レイト終了後の夜のステージに登場した。



初の試みといえども、常に変わらぬMC不在の
登壇者による自然発生セッショントーク。
そして、全員が女性という事もあり、
若松組トーク初参加という初々しさも手伝って
普段見えてこない若松組の一面を語るエピソードが
次々飛び出し、場内に何度も笑いが起こった。
各自の胸の中にあった若松組、若松孝二は、
予定の30分では到底話しきれないものだった。

トップシーン、階段を駆け上ってくるミツの芝居を
何度も怒鳴られ、「こんな最初から、監督をガッカリさせてしまったら
どうしよう」という激しい動揺の果てに、
監督から「もう、いいや」とまで言われた原田麻由。
その直後に監督が近寄って来て、この作品におけるミツについて
あるいは存在を演じる事についてなど静かに語り
「じゃあ、もう一回やってみるか」とやり直しをさせてもらって
とうとうOKの一言がもらえたという、自分の初日の衝撃を語った。

片山は、「海燕の時は、主演の自分にカリスマ性をもたせるために
一切怒ってくれなかった監督に、とうとうこの現場で
タコ!イカ!と蘭子を演じる怒鳴られた事」を嬉々として語る。
片山は、監督が亡くなる直前に参加していた釜山国際映画祭に同行。
現地で「アジア映画人賞」を若松孝二が受賞する様を見ていて
「監督が格好良すぎて、泣いてしまった」事を告白。

若松組初参加ながら、堂々たる体当たり演技で
若松監督を唸らせた月船さららは、
「若松監督はとってもシャイで、自分の出番前なんか
 ほとんど目も合わせようとしてくれなくて、
 自分から、なんとか監督の視界に入って行こうとした。
 でも、とっても恐ろしい現場と聞いて覚悟していったけれど
 全然怒られる事もなく、思い出すのは、全裸で演じ終わった後に、
 毛布をかけた自分の傍らに来て、
「ありがとうな、ご苦労さんだったね」と声をかけてくれた優しさ」。

唯一、「レンセキ」から若松組にほぼフル参加してきた女優、安部は
「レンセキでは、チャラチャラした奴に出て欲しくないから
 出たいなら作文を書いて来い、と言われた。
 小学校の時の作文の残りの原稿用紙に「なぜ生きるのか」なんていう事を
 書いていったと記憶してます。
 オーディションでも、自分は「監督はなぜ生きているんですか」なんて事を
 いきなり質問してしまったけれど、でも監督は、面食らいつつ一生懸命考えて
「そうだなあ……俺はやっぱり、映画をつくるのが好きだから生きてると思うよ」
 と、とても真面目に答えてくださった。
 今回の現場では、今までで一番怒られて、一番心細かった。
「役者をやめろ!」が5回、「へたくそな芝居しやがって!」が5回
「二度とお前は使わねえぞ!」が1回……もう二度と監督の作品には出られないのか
 と思っていたら、全然違う形で、ほんとに最後になってしまって…。」
といった監督との関わりや、レンセキで、
「私たち下っ端兵士は、みんなで泊まり込んでいた下宿先でも
 幹部が集まるロビーのストーブの廻りには入っていけない空気でした…」と
かつてのロケ現場の日々をも語った。

父親の原田芳雄氏と若松監督との付き合いが長かった原田麻由は
ヨチヨチ歩きの赤ちゃんの頃から若松孝二に可愛がられた間柄。
「ずっと、監督には、お嬢、お嬢と呼ばれていて」といったエピソードに
他の3人からは「いいなあ、羨ましいなあ」といった声も。

それでも、4人が、互いに補い合い、相手のエピソードを引き出し合いながら
トークを進めていく様子、お客さまをいかに楽しませようかと
心を砕いている様子、そして、監督の代わりとなって、片山が
ガイドブックを片手に「ここには、監督の思い、出演者の思いや
いろいろな方たちの作品への言葉が…」とアピールすると、
安部が「もしよければ、ではなくて、ここにいらっしゃる方全員
必ず、お買い求め頂きたい……」と言葉を足して場内を笑わせるなど
4人の息のピッタリ具合、気持ちの寄せ合い具合に感動する程の
濃密かつ軽快かつ心地良い笑いの30分となった。

若松組を支えた女優たちは、やっぱり女っぷりがカッコイイ!と
改めて4人に惚れ直したレイト&トークとなった。

2013年3月14日木曜日

いよいよ明日!若松孝二を支えた女優たちが集結!

若松組始まって以来の試みだろう。
若松孝二を支えた女優たちによる「女子トーク」イベント。
いよいよ明日、ヒューマントラストシネマ有楽町にて!
20時45分の回上映終了後。
ゲスト:原田麻由、月船さらら、片山瞳、安部智凛
http://www.ttcg.jp/human_yurakucho/topics/detail/19552
※通常料金、劇場窓口にてのみ前売り券使用可。
※指定席券との引き替えが必要。
※詳細は劇場へお問い合わせください。

エロスと反権力の巨匠と言われつつ、
実はフェミニストでロマンチストだった若松孝二。
その独特の眼差しは、現場を体感した俳優たちは
皮膚で感じ取ってきたものだろう。
今回、近年の若松組常連女優から、
「千年の愉楽」が若松組初参加という女優まで、
個性派実力派が勢揃いする。
普段壇上に登るメインキャストたちの言葉とは異なる
若松組の現場の空気をひしひしと感じて頂きたい。

2013年3月11日月曜日

柏のミニシアターの瑞々しい息吹と「千年の愉楽」

柏に2月にオープンしたキネ旬が手がけるミニシアター「TKPシアター」。
ロビーにずらりと並ぶのは、過去の「キネマ旬報」バックナンバー。
柏駅徒歩1分という商業エリアのど真ん中。
キネマ旬報が手がけるだけあって、特徴ある作品セレクションに
知る人ぞ知る穴場のシアターとして注目を集めつつあるという。
……と、まだ生まれたてシアターの瑞々しさ溢れた劇場の1スクリーンにて
「千年の愉楽」も公開中である。
公開2日目の10日(日)、佐野史郎、高岡蒼佑が、舞台挨拶に登壇した。
老若男女がいい感じに混じり合ったお客さまたちと
上映後の余韻に浸された劇場内。
壇上に上がった2人、まずは「出演のきっかけ」を尋ねられ
それぞれが応える。
ちょうど、仕事をしばらく休もうかと思っていたタイミングだったけれど
ホン(台本)を読んだら、三好に強く共感して……と高岡。
一方の佐野は、実は民放の日曜昼間のバラエティ番組収録中に
若松監督がサプライズゲストとして登場し、その番組中に
<考えている企画があるので「千年の愉楽」を読んでおいてもらえると嬉しい。
腐れ縁だと思って出演をお願いします>という半ば強引な
若松孝二らしい公開オファーを受けたエピソードを語って場内を沸かせた。

すると、高岡が「そもそも、監督が僕の存在に気付いてくれたのは
twitterなんかで僕が騒がれたという、あの一件があったからなわけで…」と苦笑。
若松組の舞台挨拶は、いつでもどこでも、「写真撮影はOK」である。が、それは
「それをtwitterなりブログなりFacebookなりで宣伝する事」という条件付きだ。
人は、人と出会い、情報と出会い、そこから先、どんどん転がり出す。
若松孝二と高岡蒼佑の出会いは、twitterが仲介役を果たしたのだとしみじみ。
客席からは
「額縁の中の礼如がしゃべるシーンは、自分でどう思ったか」
「メイキング映像を見ると、笑顔が多い現場だったようだが、
 どんな時に笑顔が生まれたのか」
「若松監督とのエピソードは」といった質問が相次いだ。
佐野は、額縁がしゃべるシーンについて
「当然、この作品そのものが、あるファンタジーの中で描かれているもので
 自分としても考えてみたのだけれども、そもそも、礼如とオリュウは
 何世代にもわたって、路地の人間を取り上げ、そして見送って来た。
 一体全体、彼らは何歳なんだ、と考えた時、そもそも、
 彼らが生きているか死んでいるかすら、分からない事だと気付いた。
 それは、目の前に存在しているという事が全てで、
 「生きる」と「死ぬ」の境界線は実は見えていないんじゃないかと。
 それは、この作品のテーマ全体に関わっている事だけれども」と
作品の世界観について語った。
監督とのエピソードについて、高岡は
「自分は監督の人間っぽいところが好き。決めつけずに生身の人間を
 そのまま好きでいてくれる人だった。
 まだ次があるだろう、まだ一緒にいられるだろうという
 なんとなく思い込んでいたら(こんな形でいきなり別れる事になり)……
 でも今は、出会えた事に本当に感謝している」
やんちゃな三好に目を細めていた現場での若松監督。
今も、全国の劇場を飛び回って、一生懸命に
作品や自分について語っている高岡を、目を細めて見ているに違いない。
佐野は「僕が須賀利に到着するやいなや、監督が嬉しそうに
ここのオバハン達はな、色男が次々にやって来るから、どんどん化粧が濃くなってな
「一晩一緒にいられたら、死んでもいいわ〜」なんて言ってるんだよ〜!」と
ニヤニヤしながら開口一番に報告してくれた事を思い返していた。
各地の先行上映や初日挨拶にまわっていていつも思うのだが、
上映後の劇場内には、不思議な空気が満ちている。
生まれて、死んで、生まれて、死んでいく。
スクリーンの中の眼差しが、奄美民謡の調べとともに
劇場内に流れ出し溢れ出していったような、
そんな一体感に包まれている。
監督の血と肉からうまれた物語が
スクリーンから流れ出していった直後の空気に浸されると
言葉を失いそうになる。
若松孝二の最後の歌。
今、全国のスクリーンで流れています。
ぜひ、足を運んでください。
今週15日(金)は、ヒューマントラストシネマ有楽町にて
「千年の愉楽」を支えた女優たちによる
若松組初企画「女子トーク会」を行う。
20時45分の回上映後。
原田麻由、月船さらら、片山瞳、安部智凛
そして16日(土)は、再び柏のTKPシアターへ。
「千年の愉楽」 14時20分の回上映後
井浦新、大西信満
「11.25自決の日」17時の回上映後
井浦新、大西信満

2013年3月9日土曜日

初日、満員御礼!飛び立った「千年の愉楽」

3月9日、雲一つない快晴。
晴れ男の若松孝二の、最後の初日に相応しい青空。
最後の初日。この言葉を噛みしめる。
終わるのである。
そして、始まるのである。
テアトル新宿初日、立ち見席含めて完売御礼。
マスコミがロビーに溢れかえる。
今日は、ついに、達男役の染谷将太も駆け付け
中本の男たち勢揃いの舞台挨拶とトークである。
初日という事は、今日から走り始めるという事だ。
あっという間の数週間の始まりである。
ロビーでのマスコミの囲み取材を終え、上映終了を待つ。
エンドロールの歌が静かに消え、一瞬静まった劇場内に
拍手が沸き上がった。
壇上に並んだ6人は、取り囲むマスコミを前にしつつも
いつもの若松組らしくMCなしの
自然発生的なトークセッションを開始した。

 

「1000年前の風景、100年前の物語、今を生きる我々の肉体
 歴史を刻んできた須賀利の風景、あらゆるものが、透かし模様になって
 重なっている。
 それは、映画には登場してこないが、彦之介をさらに遡った
 路地の人間たちの生き死に、あるいは芳雄さんの存在などもはっきりと感じる。
 映っていない事が、画面の向こう側にある事の大切さを刻むべく
 若松監督は、常に挑んでいたと思う」と佐野史郎が、言葉を切り出す。
「どんな舞台挨拶でも、ネクタイなどして来る事はなかったけれど
 今回の『千年の愉楽』初日の劇場は、僕にとっての聖域なのです」と話す
ネクタイとスーツ姿の井浦新の首には
監督からの形見分けのマフラーが巻かれていた。
「作品は、生まれたら、生まれっぱなし。若松さんの「千年の愉楽」
 さらには、若松さんの全作品は永遠に走り続ける。
 僕はこのロケの5年前に連合赤軍のオーディションに行き
 一言も話す前に「大体分かった」と帰されて、落とされた。
 理由は「ちょっとこぎれいすぎた」。どうしても出たかった若松組の現場、
 5年越しの願いが叶って参加出来た事が、今は本当に嬉しい」と染谷将太。
「この作品には、若松監督の全てが詰まっている。
 現場で演じながら、全てを包み込む眼差しのオリュウは
 監督なんじゃないか、と思う瞬間がたくさんあった」と寺島しのぶが語った。
続いて移動したキネカ大森も満員御礼。
若松組恒例ティーチインでは、客席から
「風景の中に時折映る現代のディテール
衣裳のそれぞれのありようなどが、
時代のファンタジーとして見えた。衣裳の意図は?」
「若松孝二の、ここが凄い!というところは?」
といった質問が出た。
原作には、ある時代設定がはっきりしているけれども
歴史を刻んできた「今」の風景の中で「今」演じる以上
それは、1000年前でもなく100年前でもなく今でもなく
あらゆる時間の流れが積み重ねてきたものが積み重なっているのだという事。
衣裳の中に、監督が込めた、原田芳雄さんの存在への眼差しなどを
それぞれのキャストが自分の言葉で語った。
監督についても
「常に、物事は1つの見方に限定しない。右でも左でも暴力でもエロスでもなく
 実は非常にプレーンな眼差しをいつも持っていた」(佐野史郎)
「過去も未来もない、常に「今」があって、そこから未来も過去も語る。
 75歳という年齢になってなお、「今」を常に生きていた」(高良健吾)
「実は、とってもずるいところもあって、でもそこをも含めて
 愛情深く、社会的に弱い人への眼差しは優しく、強いモノにはキバをむく
 その姿勢にはブレがなかった」(井浦新)
「人を、ひとりぼっちにしない人」(高岡蒼佑)
「役者にとって、とても大切な事を気付かせてくれた。
 自分が演じる上で、自分に関わる事、映る事には全て、自分で責任を持て、と。
 ラクな現場が多い中で、若松監督に教わった事は忘れずにいたい」(寺島しのぶ)
 
そして、本日最後の劇場、横浜ジャック&ベティへ。
「未来の子どもたちへのメッセージかな、と思いました。
 どんな命も、そのままでいい、どれも平等なんだ、という
 生まれて来る子への希望だと思えました」
「これはとても仏教的な映画であり、根底にずっと
 浄土真宗があり、オリュウは弥勒さまに見えました。
 全てのありようを受け止める眼差しを、作品の中に感じました」
ひとりひとりの中で、「千年の愉楽」が自由にうまれた事を感じ
キャストたちが紡ぎ出す1つ1つを、愉しんで愛おしんでいた
若松孝二の眼差しが、フィルムに焼き付けられている事を感じた。
そして、ここジャック&ベティにてサプライズゲストが。
客席の中に座っていたのは大西信満。
「実録・連合赤軍」で坂東國男を演じ、「キャタピラー」で
寺島しのぶ演じるシゲ子の夫、手足を失った帰還兵を演じた若松組常連俳優だ。
「若松孝二の現場で最も怒られ、檄を浴び、愛情を受け、
 ほとんど付き人のように全幅の信頼をおかれていた大西君、前に来て」と
井浦新に呼び出され、大西も壇上に上がる。
が、いつもムードメーカーで茶目っ気ある毒舌の大西に、いつものキレがない。
「今……この作品、自分は初見でした。本当に……
 僕は、今まで、この作品にほんの少ししか参加できなかった事を
 悔しいという思いしかなかった。でも、作品を見て…
 今は、この作品に、少しでも関われて本当に良かったと思ってます……
 皆さん、本当におめでとうございます」と、キャストに向かって頭を下げた。
実は、この作品のクランクイン直前に
大西は足を大怪我して入院しており、
監督からのオファーを受けるも、地方ロケに動ける状態になかった。
そんな大西に、せめてワンシーンだけでもと、
監督は都内ロケで済む、男Aの役を任せた。
飲み屋街を歩く三好の視線がぼやけて来て、
向こうから歩いて来る男と肩がぶつかる。
「気ィつけんかい!」と一喝される。
そのわずか数秒のシーンに出て来る通行人の男が、大西である。
いきなりのご指名に汗をかきつつ、トークに加わる大西。
このライブ感が、若松組であった。
若松孝二がつくりだした、現在進行形の「今」だった。

作品を、お客さまのところに届けるために、
1人でも多くのお客さまに存在を知って貰うために
キャスト一人一人が、その思いだけで全力で走ってくれた事を思う。
何度も、「観てください」
「この作品の存在を一人でも多くの人に知らせてください」と
頭を下げて来た事を思う。
3つの劇場で、計6回の舞台挨拶が終了した。
本日、全国の劇場に足を運んでくださった
全てのお客さまに心から感謝を…。
まだ、もうしばらく、走らねばならない。
独立プロの自主配給は、走りやめたら終わりである。
作品が「うまれる」場を、押し広げていかねばならない。
明日はTKPシアター柏にて、舞台挨拶。
佐野史郎、高岡蒼佑が登壇する。
そして15日はヒューマントラストシネマ有楽町にて
「千年の愉楽」女優陣たちの女子トーク。
原田麻由、片山瞳、月船さらら、安部智凜
まだまだ、ゆけゆけ若松孝二!

2013年3月2日土曜日

監督悲願の井浦新「主演男優賞」、大阪アジアン映画祭

間もなくスタートする「大阪アジアン映画祭」。
井浦が「かぞくのくに」と「11.25自決の日」で
主演男優賞を受賞する。
「新に『三島』で男優賞を取らせたい」
常々つぶやいていた監督だった。
大怪我で入院中の病床でオファーを受け
心血注いで三島を演じきった井浦の心意気に
監督は、なんとか応えたいと思っていた。
明日3月3日は同映画祭のプレイベントとして、
「かぞくのくに」記念上映と、授賞式が行われる。
若松孝二への特別賞も、井浦が代理で受け取る。
トークイベントでは、共演者の水上竜士と共に
若松孝二とその作品について語る。
本日、公開初日のテアトル新宿、キネカ大森の
チケット販売がスタートした。
お陰様で、1回目の回はほぼ完売らしい。
待っていてくださる全国のお客さまに
バトンタッチする日はもう少しである。