2011年5月27日金曜日

波しぶきと噴煙と…そしてクランクアップ!






 

 

 

 




あのシーンは、どこにつながるの?
一体、どうして、こんな撮り方するの?
さっきはこう言ったのに、今は真逆の事を言ってない…?
空間を見て、役者の演技を見て、その場でキャメラのアングル
カット割りを即断する若松監督。
現場で、次々と変わっていく演出に、
「実録・連合赤軍」「三島由紀夫」に続き若松組3作目となる
岡部尚は、「すごくエキサイティングな現場だった」と語った。


体調が決して万全ではない中で始まった大島ロケ。
数日ナイター撮影もあり、若松組にしてはハードなスケジュール。
後半、明らかに疲労が蓄積した様子の若松監督だったが
最後まで全力疾走し、昨日、無事クランクアップした。
少ないスタッフをサポートすべく、俳優部も全力投球。
自らの衣裳や小道具の管理はもちろんのこと、演出部の手伝い、
他の役者へのケアなど、役割を超えて大活躍、まさに全員で創り上げた現場だった。
「実録・連合赤軍」以来の若松組常連メンバーである、
ARATA、地曵豪、大西信満の3名には、役者としてのみならず、
スタッフの支えとして、本当に様々な場面で助けてもらった。
初の若松組となった主演女優の片山瞳も、
単身で現場に入り、体当たりの演技を見せた。

そして何よりも、若松監督の旧友で大島在住の佐々木美智子さんの
全面的バックアップがあったからこそ可能となったロケでした。
ご協力くださったたくさんの方たちに、心からお礼申し上げます。
本当に、ありがとうございました。


来週から、「三島」と「海燕」の編集作業が始まります。
制作状況も、折に触れてブログ上でご報告していきます。

またまたクランクイン!疾走続く若松監督

昨日、若松組「海燕ホテル・ブルー」(船戸与一原作)ロケがスタートした。

台本が刷り上がったのは、今月半ば。
その後も、日々、監督の中で新たなイメージが生まれ、本は次々と書き直されていく。
真っ黒な砂漠、暗くうねる波しぶき、その茫洋と広がる風景の中に、
閉じ込められてゆく男たち、摩訶不思議な女……。
監督の口から語られるのは、まさに、1970年前後の若松作品に描かれる、
荒野の密室劇のイメージそのものだ。
人間の業、胎内を思わせるような空間、どこまでも不毛なこの社会…。
話しを聞いているだけで、ゾクゾクしてくる。
完成を、楽しみにお待ち下さい!


さて、昨日のファーストシーンの撮影は、埼玉にある中古車整備工場にて。
「実録・連合赤軍」で吉野雅邦を演じたウダタカキが登場した。
「台本なんて信じるな!」という監督の現場の空気をすでに知っているウダ、
自分自身の内側からリアルな言葉として思いが漏れ出す。
相対する主演の地曵豪の口から出る言葉も、もはや台本に書かれた台詞はどこにもない。
お互いのギリギリのせめぎ合いは、まるでジャズのセッションを聴いているようだ。
その後、三郷のトンネルで緊迫感溢れる強盗未遂シーンの撮影後、
都内のバーにてワンシーン撮影。
若松監督行きつけの新宿二丁目のバー「ナジャ」にて。
「三島由紀夫」クランクアップからわずか4週間足らずでのクランクインという、
ハードなスケジュールだったが、若松監督は、周囲の心配をよそに、
初日から若松節を炸裂、熱気溢れる現場となった。

2011年5月2日月曜日

クランクアップ!

御殿場以降、怒涛の撮影が続き、ブログ更新のタイミングを作り出せませんでした。
おかげさまで、昨日、監督行きつけの高円寺の串焼き屋「一徳」さんにて
ラストカットの撮影が行われ、無事クランクアップ致しました。
後半、どんどん加速していく監督のエンジンにより
日々、俳優もスタッフも緊張感全開、集中力全開、
いっぱいいっぱいの状況が続いていました…。
監督も、自分の体力の限界ギリギリの状況の中、
それでも、全力でラストまで無事走り抜くことができました。
それは、スタッフと文字通り二人三脚で現場に関わり、
この作品への情熱をしっかりと注いでくれた出演者の皆さん、
さまざまなロケ地にて、ご協力くださった皆さまのお力があったからこそです。
本当にありがとうございました。

 

 

 

 



 

ややタイミングを逸してしまいましたが、以下、撮影現場ルポです。

3日間続いた御殿場ロケでは、全日とも天候に恵まれて
自衛隊訓練や、三島と自衛隊幹部とのせめぎ合い
楯の会の結成式などの撮影が順調に進められた。


御殿場2日目は、朝イチで三島の演説シーン。
ARATAの渾身の叫びが、バルコニーに響き渡る。
あの瞬間に三島が吸っていた空気を、追体験している感覚に陥る。

そしてこの日は、今回のロケ中唯一の夕食後撮影となった。
(さすが早撮りの監督、モリモリと撮影スケジュールを盛り込んでも、
 大抵、午後3時頃には撮影を終えていた…)
自衛隊訓練の夜営シーンと、三島と森田ら若者たちの
最終行動に向けたせめぎ合いのシーン。


ーー
夜更けまで、監督の集中力は途切れることがなかった。

3日目には、三島の妻役の寺島しのぶが富士の荒野を歩くシーンの撮影。
「キャラピラ−」に続き2本目の若松組となる寺島の演技に
監督の満足そうな「オーライ!」の声が響く。

 茫洋と広がる荒野、彼方に空を切り裂きそびえ立つ富士。
三島が自衛隊の訓練に汗を流した時にも、
三島が己の命をかけて行動を起こした後にも、
それらは全く同じ姿で、私たちの眼前に存在し続けている。
その状況の目撃者として、寺島の存在は作品の中で重要な意味を持っているのだ。
御殿場ロケの翌日からは、三島邸。
派手なシーンはないが、交わされる言葉、目線、絶妙な間合いが
三島を巡る人間模様を絶妙に描き出していく。
三島が背負おうとしたものの大きさ、彼の孤独、苦悩、
そして、彼と共に生きようとした若者たちの切実さ。
それは、イデオロギーや主義主張を超えた、
人間の「生」そのものの切実さで、見ているこちらの胸に迫ってきた。
役者がアドリブで漏らした言葉に心を打たれたり
気付くと涙がこぼれたり…そんな三島邸ロケ2日間だった。
三島邸のロケ写真は、後日アップします。
そして、いよいよ4月29日は、総監室に立て籠もり自決へと至るシーンの撮影。
役者も監督も真剣勝負。狭い室内に、気合いと殺気じみた空気が充満した。
どのようなシーンに仕上がったか、映画の完成を楽しみにお待ち頂きたい。

そして、昨日のラストシーンの撮影で、怒涛の2週間が幕を閉じた。
ラストカットの舞台は、冒頭の通り、監督行きつけの串焼き屋「一徳」さん。
アップ後は、全員で乾杯し、一徳さんの絶品レバー焼きをいただいた。
全力疾走後の脱力感と達成感の混じった役者さんの笑顔を見ながら食べるレバーは
ほろ苦く、少しもの哀しく、胃の中にしみこんでいった。