2012年4月24日火曜日

ロフトプラスワンで吠える若松孝二

4月21日(土)夜、新宿ロフトプラスワンにてトークイベントが行われた。
「映画最前線トークセッション 
 ドキュメンタリー映画と劇場映画の交差点」
 ~『311』と『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』を語る~
「311」というドキュメンタリーを撮った森達也さんたちと
若松監督、そして「11.25自決の日」に企画として関わった鈴木邦男さんたちが
縦横無尽な会話を繰り広げた。

「311」では、福島原発事故の現地や津波の被災地の取材を映し出すというより
その物事と向き合おうとする自分たち自身の未熟さや脆さをさらけ出す。
非情なまでに裏側を映し出すキャメラは、
観ている自分自身の脆さをも鏡のように映し出す。
…というような会話を交わしつつ、
「11.25自決の日」の予告編とメイキング上映。
ひたすら飛び交う怒号、罵声、追いつめられるキャスト、凍り付く現場の空気。
若松流の演出術を、キャメラが映し出す。
前日に公式にアナウンスされた「カンヌ映画祭正式招待」も告げられ
数日前まで北朝鮮に行っていた鈴木邦男氏の仲介で
トークの最中に北朝鮮「よど号メンバー」と電話で会話を交わす一幕も。
よど号ハイジャックも、「三島」の劇中では、重要な事件として登場する。
鈴木氏が持参した「三島」のDVDを観たというよど号メンバーたちの
胸中はどうだったのだろうか。
さらに話しは進み、「今の世の中の閉塞状況の中で、
 どう立ち上がれば社会は変わるか」との会場からの問いに
「それに対して明確な答えがあれば、みんな実践してますよ」と森達也氏。
その後は、脱原発の市民運動のやり方や、現代のデモのスタイルを巡って大激論に。
「自分たちの意志を表明できるんだ」という立ち上がる一歩として
今のデモンストレーションの大きな役割がある一方で、
若松監督は「自己満足で終わる。それよりも、政治家一人一人に圧力を」と吠える。
合法的で楽しい闘争なんてない、という監督の昔からの意識が炸裂。
とはいえ「世の中で常識とされていることを、まず疑い、自分の思いを声にあげる」
今のデモは、たとえ流行で一過性で終わる部分があったとしても
民主主義とは何かを一人一人が「自分の事」として考えるきっかけともなった。
民主主義は、誰かが用意してくれて、お膳立てしてくれるものではなくて、
自分で考え、自分で主張しないと実現しないものなのだと気付かせてくれた。
というような事を考えつつ、しかし、こうやって、激論が交わされる空気は
最近少なくて、やはり新宿の空気だな、と感じるディープな一夜は更けていった・・・。

2012年4月20日金曜日

カンヌ国際映画祭「ある視点」部門正式招待決定!

カンヌ国際映画祭「ある視点」部門正式招待決定!

若松孝二、41年ぶりのカンヌ映画祭招待が決定した。

「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」
(英題:11/25 The Day Mishima Chose His Own Fate)
41年前のカンヌ映画祭では、監督週間で招待され
「犯された白衣」「性賊」などが上映された。
そして、41年ぶりのカンヌの大舞台、しかも「ある視点」正式招待の快挙である。
監督に胸中を訊ねると、一言。
「僕が、今さら、わ〜嬉しいです!感激です!なんて言うか?
 僕の映画への気持は、41年前も今も、何も変わってないよ。
 作りたい映画を作り続けるだけだよ」
それでも、やはりその瞳は嬉しそうに輝いている。
なんといっても、低予算の独立プロの自主配給。
海外の三大映画祭に招待されるということは
宣伝効果の観点でも、大変嬉しい事であることは間違いない。
これで、告知が十分できずに公開に踏み切った
「海燕ホテル・ブルー」の存在も、
より多くのお客さんに知ってもらうことができるだろう。
その事も、監督にとっては嬉しい収穫だ。
「海燕」についていえば、すでにヨーロッパから
上映・配給のオファーが来ている。
実は、「若松作品」ならではの旋律が隅々まで奏でられた怪作として
「海燕」も、静かな話題作となりつつあるのだ。
カンヌでの上映、そして6月2日の全国公開に向けて
「三島」のエンジンも徐々に加速している。
慌ただしくも嬉しい日々が始まる。

2012年4月3日火曜日

映画『海燕ホテル・ブルー』&映画『11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち』関西先行試写会

3月30日(金)大阪のテアトル梅田にて若松孝二監督の最新2作品の先行試写会が開催されました。2本立ての先行試写会の開演は18:50からです。若松孝二監督と井浦新さんのお二人は上映後の舞台挨拶の前にマスコミキャンペーン取材を精力的に受けられました。キャンペーン会場の十三のシアターセブンで12:30からほぼ食事休憩なく舞台挨拶直前までキャンペーン取材です。本当にお疲れ様でした。先行試写会はチケットぴあで発売した分も完売し、立ち見のお客様も入れて110人の方々の熱気に包まれたものになりました。若松孝二監督の作品ですが井浦新さんの舞台挨拶付ということで彼のファンの若い女性の方がほとんどです。彼女たちはこの2作品をどのように受け止めたのか。興味あるところです。



上映後の舞台挨拶はお客さまからの質疑応答が中心に進みました。『11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち』を12日間で撮り終えてすぐに大島での『海燕ホテル・ブルー』の撮影に入った時の井浦新さんの役柄の切り替えが難しかった話、『海燕ホテル・ブルー』の撮影現場は映画を楽しんで撮ることに若松孝二監督が徹した現場でいつも笑いが絶えなかったなどなど・・・。お二人共、キャンペーンの疲れも感じさせず、お二人には頭の下がる思いです。舞台挨拶終了後には上映中に『海燕ホテル・ブルー』の100冊の公式ガイドブックにお二人がサインしたサイン本があっという間に完売の状況です。井浦新さんはロビーで一人一人のファンの方と握手をかわしてお礼を述べながらファンサービスに努めておられました。3月31日(土)の夜にはテアトル新宿での舞台挨拶です。本当にお疲れさまでした。
 映画『海燕ホテル・ブルー』
   テアトル梅田、シネ・リーブル神戸 4月7日(土)より公開
   京都シネマ 4月14日(土)より公開
   第七藝術劇場 4月21日(土)より公開
 映画『11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち』
   テアトル梅田、第七藝術劇場、シネ・リーブル神戸、京都シネマ 
   6月2日(土)一斉公開

2012年4月2日月曜日

キャストが勢揃いした一夜

昼間の暴風雨が徐々に納まりつつあった3月31日(土)夜、
テアトル新宿に、「海燕ホテル・ブルー」のキャストたちが集まった。
初日舞台挨拶には地方ロケのために参加できなかった井浦新も
劇場に駆け付け、若松監督、片山瞳、地曵豪、大西信満らと
お客様の前に並んで挨拶した。
テアトル新宿での公開が折り返し地点に来たこの日、
劇場に足を運んでくださったお客様たちの中には
「2回目です」という方も。
観る度、新しい作風が目の前に立ち現れてくるのが
この作品の面白さでもある。
舞台挨拶では、若松監督と井浦が司会進行も兼ねた。
場内からは「老婆」の意味するところ、
若松作品の<常連>という肩書きがつきつつある井浦に
若松組の魅力についてなど、質問の声があがった。


自分自身は<常連>だとは思っていないこと、
1作品1作品が一発勝負であること、
その上で、今回の作品は、レンセキからの仲間である
地曵、大西らとの共演で、ある種の神がかり的な呼吸の中で
演技ができた奇跡の現場であったことなどを井浦が語った。
ジム・オルークのサントラ付き公式ブックも
監督の熱心なアピールの甲斐あって、
この夜も8割近いお客様がご購入くださる。
この公式ブック、原作者の船戸与一と若松孝二の
長きにわたる交友関係(実は、『聖母観音大菩薩』(1977)に
船戸はエキストラで出演も)が織り込まれた対談や、
キャストの座談会、撮影日誌や完成台本など
盛りだくさんの内容。
21世紀の「若松メルヘン」(宮台真司・談)として
長く記憶される作品になる事を願っている。
テアトル新宿での公開は4月6日(金)まで。
その後はキネカ大森ほかでの上映が予定されている。
皆さま、どうぞ劇場に足をお運びください。