鬼首ロケは、予定よりも一週間も早く終了することになった。予定していたシーンをほぼ撮り終えたためだ。
今日は、鬼首の中心地から10数キロ離れた鎌内地区に造られた迦葉ベースのセットで撮影。セットは一度強風のために壊れ、立て直された。この迦葉ベースから連合赤軍の崩壊が始まる。
今朝は寒かった。撮影開始は、午前9時頃。しかし、始まった撮影撮影は、「早撮りの若松」の名をしても信じがたいほどの猛スピードだった。ナイト・シーンをデイ・シーンに変えたりして、とにかく次々に撮影をこなしてゆく。あっという間にデイ・シーンを撮り終えた若松監督が発した言葉は、なんと「今回のロケは、今日中に終えるゾ」だった!!
じつは、この迦葉ベースでは3日間の撮影スケジュールが組まれていたのだから、スタッフだけではなく出演者も、呆然……。そして、再び怒濤の撮影が始まった。
森と永田が迦葉ベースから一時下山している間に、脱走者や部隊から脱落する者が出て、連合赤軍は思いかけない早さで崩壊に向かう。そして、最後に残った5人が「あさま山荘」に立て籠もる。その崩壊の過程をわずか1日で撮ってしまうのは、物語を膨らますカットやエピソードを省き、ストーリーを根幹となる必要最小限の要素で描こう、という意図があるからだ。
撮影が夜になってから、総括を要求され死を予感する山本順一と妻保子の別れのシーンもあった。保子を演じた比佐廉は、そのシーンを終えてからもしばらく泣きやまなかった。
監督は、映画には「流れ」がある、という。つまりテンポやリズムのことだ。榛名ベースでの粛清から「あさま山荘」に至るその流れを止めたくないの で、あえて迦葉ベースのシーンは極限までそぎ落とされることになった。
こうして、この映画の鬼首ロケは、誰もが呆気にとられるうちに終了に向かった。
……ということで、明日(27日)、スタッフ出演者、全員が鬼首を離れる。
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