2006年11月16日木曜日

山奥に響く「インター」

11月15日
 午前7時半。天候、晴れ。「新倉ベース」での撮影、始まる。昨夜の雨で、現場から見上げる山の頂が白く染まっていた。現場には、出演者たちの控え室用に天幕が張られている。昨夕、現地入りした出演者たちは、緊張の面持ちだった。
ファースト・カットは、赤軍派と革命左派(京浜安保共闘)の共同軍事訓練に先立つ全体会議。出演者たちのその緊張が、実際にこのとき初めて顔を合わせた連合赤軍のメンバーにふさわしい。この共同軍事訓練は、赤軍派の森と、革命左派の永田による主導権争いの場でもあった。






共同軍事訓練のシーンは、若松監督の経験が生かされた。監督は、1970年「赤軍-PFLP 世界革命戦争宣言」の撮影の折、レバノンでPFLPの軍事訓練を経験している。この軍事訓練の撮影の半ばから、雨が降り始める。山の天気は、この映画の撮影同様、変化のテンポが速い。
昼飯は、現場に配達された弁当。

 午後、連合赤軍の主導権を握ろうとする革命左派による、赤軍派への巻き返しが起きる……。それに利用されたのが、赤軍派メンバーだった遠山美枝子だった。遠山を演じる坂井真紀は語る。
「私は、〈女性〉という問題に興味がありました。日本赤軍の重信房子さんなどは、機会があれば演じてみたいとずっと思っていました。若松さんと知り合い、その重信さんの親友だった遠山さんが主人公の一人となるこの映画の話を聞いて、これこそやりたい、と思ったのです。いま、どんどん自分が遠山さんに引き込まれいるのを感じています」
屋根を叩く雨脚の音で中断する場面もあったが、撮影は午後5時頃終了。皮肉もそのときは、再び星のきれいな晴れ空だった。

そして、午後8時、静かな山里にときならぬ革命歌「インター・ナショナル」が、響き渡った。出演者たちによる、明日のシーンのための歌唱練習だった。時と場所を超えて、かつての若者たちの聖歌「インター」が響き渡る……。ここ鬼首に、映画という〈異空間〉が出現しつつある。
 




 

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