2012年6月26日火曜日

ニュースの視点「なぜ、今、三島由紀夫か」

昨日、TBSの24時間ニュースチャンネル「TBSニュースバード」の
「ニュースの視点」という生放送番組に
若松孝二監督と鈴木邦男氏がゲスト出演。
43分間にわたり、たっぷりと
「今、なぜ三島由紀夫をテーマに描いたのか。
 三島という人間。彼の生き様から現代の私たちは何を受け取るのか」
といったテーマについて、様々な角度から論じ合った。

途中、1969年当時の東大全共闘と三島氏との討論会のニュース映像や
1966年にTBSが収録していた三島氏の一問一答の映像が流れ、
「愛国という言葉は強制的なにおいがあり嫌いだ、
 自分は憂国なのだ」という言葉や
「文士の自殺は消極的な自殺だ、一方で僕は攻撃としての自殺は認める。
 武士の自殺がそれである。僕が死ぬならば、武士となってから死ぬよ」
といった言葉など、三島氏が、自身の落とし前の付け方を
様ざまなニュアンスを込めて語っているVTRを、
若松監督も鈴木氏も、食い入るように見つめていた。
「三島氏の生き様、死に様から、何を受け継ぐか」との問いに
若松監督は「いつの時代も同じように、おかしいと思ったら
自分の気持ちに正直に生きるということでしょうね」と語った。
「三島さんはなぜ、死なねばならなかったのか」という問いには
「それは、本当に僕にも分からないんですよ」と若松監督が語ると
鈴木邦男氏も「だから、みんな、42年経っても、こうやって考えている」
と語り、「時代が追いつめたということも、
若者たちが追いつめたということもあろう」と続けた。

2012年6月20日水曜日

中上さんを指先に感じて…黒田さん200枚ライブペイント完成!

東北で監督が劇場を回った3日間。
その同じ3日間、都内では、監督の盟友・黒田征太郎さんが
『千年の愉楽』のポスターを手描きで200枚
ライブペインティングしていた。



 

本日の黒田さん。
BGMは松田優作さんのベストアルバム。
「優作は中上さんと会いたがっていたんだ。
 でも、会えないまま、二人とも逝っちゃったから。
 だから、今日は二人を連れて来たんだ」と黒田さん。
白いポスターを目の前にして、
考え込む時間はわずか数秒。
汲めども尽きぬ泉のように、
次から次へと、黒田さんは、千年の愉楽の世界を
B全の紙の上に描き出していく。
先日、見学に来ていた学生たちに、黒田さんはこう話していた。
「僕はね、描く前に考えないんです。
 じっくり構成を…ということを、一切しない。
 もともと、こういうタチなんですね。
 それに、描く前に考え込むって、自分というよりも
 他人の評価を気にして、ほめられたいから、
 考えてしまうんだと思うんですよ」
今日も、描きながら、こう語っていた。
「僕は、ヒトにあれこれ言われるのが好きじゃない。
 僕がいいと思ったらいいんだ」
黒田さんの指先から、中上さんの気配がほとばしる。
中上さんへの愛情を込めて、
中上さんの『千年の愉楽』の行間に立ち上る情景に愛情込めて
黒田さんが、そこに魂を込めていくのを感じる。
その表現の瞬間には、他者の評価など、入り込む隙はない。
心が震えるような、ライブペインティングだった。
200枚、描き終えた時、黒田さんが、ラストの一枚に
中上さんへのコトバを書き添え、ペンシルを置いた。
「おわり!」
汗の光った黒田さんの顔に、笑みが浮かんだ。
最高の瞬間に、立ち会えたと思った。

八戸も無事終了!

悪天候の中、フォーラム八戸も無事終了!との
連絡が入る。

またまた、井浦のfacebookからの流用となってしまうが
「ラストシーンの、ひろげた両手の下にあるテーブルに付いたシミが、
飛び散った血のようでした」
とのコメントが客席から飛び出したという。
まさに、映画とは、作り手と観る側とのジャズセッション。
その色彩は、変幻自在に、変わりゆく。
後は、今夜のフォーラム那須塩原を残すのみ!

フォーラム盛岡にて、トーク白熱1時間半!

近畿から東海、関東と嵐が吹き荒れた昨夜。
台風は現在東北東側を北上中。
みちのく二人旅の監督と井浦の道中が気になるが
まずは、届いたばかりの18日フォーラム山形のフォトを。
満員の劇場。
お客様からの問いかけ。
書籍をお求め下さるお一人お一人と交わす言葉。



そして、昨日のフォーラム仙台とフォーラム盛岡も
どちらの劇場も満員。
フォーラム盛岡は最終回での上映後ということで
トークが白熱し、なんと1時間半にも及んだ。
「作品について、どのように生きるかについてなど語らい、
時間が経つのを忘れ楽しんだ」(井浦新facebookより)という。
監督も「観にきてくれるお客さんが良いから、
この映画の舞台挨拶はものっすごく楽しいなぁ」と
満面の笑みを浮かべていたとか。
いずれにせよ、ハードなスケジュールでも
劇場での手応えさえ感じられれば、
エネルギーはどんどんチャージされていく。
みちのく二人旅は、たくさんのお客様に支えられ
本日いよいよ最終日である。

2012年6月19日火曜日

東北二人旅・番外編 さくらんぼのほっぺ

東北を移動中の井浦新から届いたフォト便り。
題して「東北二人旅・番外編」



あの怒涛の移動スケジュールの中に
どうやってこんな潤いのひとときを!?
粋なおもてなしをしてくださった
フォーラムの皆さまに感謝。
さくらんぼとチビちゃんのほっぺたに癒しと元気をもらって
次なる会場での皆さまとの出会いを求めて、
さあ、東北の旅、まだまだ続きます!

フォーラム福島、フォーラム山形、超満員御礼!

東北のフォーラムを巡る二人旅。
初日の昨日は、フォーラム福島とフォーラム山形にて
それぞれ、上映前舞台挨拶と、上映後トークイベントに駆け付けた。
どちらの劇場も、立ち見が出るほどの超超満員。
「ディスカッションも盛り上がり
有意義な舞台挨拶となった」(井浦新・facebookより)という。




やはり、劇場のスクリーンで作品と向き合って頂いた後に
直接、お客様と監督、キャストが顔を突き合わして、
様々な思いを言葉にして伝えたり、問いかけたり、応えたりできるのは
お客様にとってもそうだが、作り手にとっても最高の贅沢であり
最高の喜びである。
東北二人旅は、まだまだ続く。
本日はフォーラム仙台にて
13時20分〜のサイン会付きトーク、
18時30分〜の上映舞舞台挨拶、
フォーラム盛岡にて
19時〜のサイン会付きトークイベントへ駆け付ける。
そして、明日はフォーラム八戸とフォーラム那須塩原へ……。
劇場にて、一人でも多くの方とお会いできることを願いつつ、
二人で東北を駆け巡っております!

2012年6月18日月曜日

響き渡る奄美の唄声、蠢き出すポスター

本日、『千年の愉楽』のポスターが、次々と黒田征太郎さんの手によって
息吹を与えられ、蠢き始めた。
勝ちどきにある「バタフライストローク」のギャラリースペース。
東北各地の劇場を回るために東京を出発する直前だったが
若松監督も立ち寄り、ライブペインティングを見させて頂く。


大きなB全の紙の上には、すでに
「The Millenial Rapture」と「千年の愉楽」という文字が。
紙の上で、黒田さんの手が震える。
べっとりと色の塗られた厚紙が押し付けられて、
色々な模様が紙の中に現れる。
さらに、次々と自由気ままに、手にふれた色のペンシルを掴み取り
模様の中に異形のモノたちを次々と描き出す黒田さん。

会場には、映画の本編に流れる奄美の三線と唄が流れ、
まるで、ギャラリーの空間に、中上さんの神話世界が立ちのぼってくるかのよう。
生まれた模様たちに、目ができ、翼がはえ、ベロが飛び出す。
あるいは大きな神話の岩のような、あるいは女性の性器のような
あるいは小さな子どもらがつながって横たわっているような・・・。
次々と蠢きだすポスターたち。
映像の中の空気が、ポスターの中から溢れ出してきたようだった。
若松監督も、言葉を失い、生まれてくるポスターたちを
見守り続ける。
黒田さん、流れる汗を拭いながら、
B全ポスターの中に息吹きを押し込め続ける。
明日、明後日と合計3日で200枚。
体力と集中力の勝負でもあるだろう。
途中からは、桑沢デザイン研究所の学生さんたちが
大勢、見学に来ていた。
贅沢な課外授業である。
このライブペインティング、明日、明後日まで。
http://www.shopbtf.com/

2012年6月17日日曜日

明日から、黒田征太郎さんが「千年の愉楽」ポスターをライブペイント!

「三島」公開イベントの続く日々、明日からは
監督と井浦、東北のフォーラムを3日間で回る旅へ。
そして、都内では、次なる新作、「千年の愉楽」の
イベントがスタートする。

原作者、中上健次と旧知の仲だった監督が
中上氏の神話的独特な世界観を
紀州の路地の風景の中で映像化。
観た人をして、「映画の奇蹟」とまで言わしめる作品に完成した。
そして、今回、監督とも中上氏とも親交ある
黒田征太郎氏が、なんと、本作のポスターを
3日間かけて二百枚、公開ライブペインティングで製作する!
6月18日〜20日 13:00〜18:00
勝どきにあるバタフライストロークにて。
http://www.shopbtf.com/at/sennen.html
小説、映画、イラスト、それぞの表現が交錯する様を
ライブで目撃できるチャンスである。
ぜひ、会場へ。

2012年6月11日月曜日

桜坂に長蛇の列! 本日19時西鉄ホール(福岡)にてお会いしましょう!

先週土曜日に「海燕ホテル・ブルー」が公開となり
翌、日曜日に「11.25自決の日」の初日を迎えたのは
沖縄・桜坂劇場。
森田必勝を演じた満島真之介は、沖縄出身。
彼は、映画出演は本作が初という大抜擢だ。
真之介の凱旋舞台挨拶を観ようと、
そして、監督と井浦新、大西信満の舞台挨拶を見届けようと、
日曜日の桜坂劇場には、朝から長蛇の列ができた。


 

 

そして、劇場内は嬉しい事に立ち見も出る大入り満員。
上映終了後に現れた監督及びキャストに
場内の熱気もピークに。

若松作品の舞台挨拶では恒例となった
お客様との活発な質疑応答。
イベント終了後は、ほとんどのお客様が
「11.25自決の日」公式ガイドブックをお求めくださった。



沖縄での初日は、劇場に足を運んでくださった
たくさんの皆さんと濃密な時間を過ごすことができ、
豪雨の後の眩しい晴天に見守られての嬉しいスタートとなった。
劇場で作品を堪能し、その直後に、監督やキャストと共に
作品を再び味わい返す。
お客様にとっても楽しい一時である一方、
キャストや監督にとっても、
行く度に新たな発見があり、新たな出会いがあり
元気や喜びを頂ける嬉しい一時である。
本日夜19時からは、福岡市中央区天神にある「西鉄ホール」にて
「海燕ホテルブルー」のトークイベント付き特別上映会。
http://www.nishitetsu.co.jp/nnr/solaria/hall/kouen.htm#hotel_blue
主演の片山瞳、井浦新と、若松監督がホールに駆け付ける。
福岡での貴重な機会、ぜひ、劇場で一人でも多くのお客様と
お会いできますように……!

2012年6月5日火曜日

三島由紀夫を描くということ…立川シネマシティにて

公開2日目は大阪と京都にて舞台挨拶を行った監督と井浦新、
3日目となる昨日は、
立川シネマシティにて2度の舞台挨拶を行う。
関西では、どの劇場も立ち見がでる程の大入り満員。
熱い政治議論が交わされる一幕もあったという。
恐らく、疲労困憊しているであろう二人だが、
各劇場で、多くのお客さんたちとの濃密な時間を共有できたという
その満足感の方が大きく、表情に疲れは見えない。
さて、昨日のシネマシティでは、上映後の舞台挨拶で
活発な議論が交わされた。
「三島由紀夫は右翼なのだろうか?」
「今、生きていたら、原発事故を起こした日本において
 どのような行動を起こしていたか?」
「戦争というものを挟んで、天皇バンザイという国から
 民主主義バンザイという国に、180度切り替わった日本について」
様々な疑問が客席から寄せられ、監督と井浦が、それぞれの思いを語った。
「連合赤軍を撮ったときに感じた、右翼も左翼も同じだという直感。
 その上で、身体を張った生き方に、当時の自分は
 『三島さんは、一体何をやってんだ!?』という驚愕だけだったが
 今になってみると、その生き様に、強く惹かれるものを感じた」
「特に、へりくつ云々じゃなくて、若い奴らにここまで言って
 今更、やーめた、なんて言える人じゃなかった。
 言ってみれば、「義」の人なんだと思うんですよ。
 それで、僕もどっちかというと、理屈より「義」っていう人間なんです」
「生きていたら、間違いなく、東電に突っ込んだはず。
 僕だって、もっと若ければ、突っ込みたいくらいだ。
 大体、補助金なんて、シャブみたいなものだよ。
 地元の人たちを補助金という名のシャブ漬けにしてきたのが
 原発政策でしょ。
 今、あんないい加減なでたらめで、再稼働なんていうことに対して
 もっとみんな、怒るべきだよ。
 僕は、そうした怒りがエネルギーになって、次の作品へと駆り立てる」
「戦前の天皇バンザイは、僕自身の体験となって刷り込まれている。
 一日中、どこにいても何をしていても、天皇の写真に頭を下げさせられた。
 そして、天皇のためにと、1銭5厘の召集令状で若者が集められ
 僕たちは日の丸を振って彼らを戦地に送り込んだんだ。
 僕は右翼でも左翼でもない。
 いいものはいいけど、ダメなものはダメなんだ。
 それを伝えていきたいから、映画を撮るんです」
と、持論を展開した若松監督。
また、井浦も、1つ1つの質問を真っ直ぐに受け止め
じっくりと考えながら、言葉を紡いだ。
「僕は、「実録・連合赤軍」で坂口さんを演じ、
 若松監督の盟友、足立監督の作品で、オリオンの三つ星となった一人を演じ
 今回、三島由紀夫さんを演じました。
 実在した方たちを演じること、それはその志を感じることだと思います。
 共通していたのは、何かを変えようとしていた事。
 そして、自己犠牲の気持。それは、日本人らしさとも言えると感じてます」
 


いずれにしても、実在の、極めて様々な伝説を持つカリスマを描くことの
難しさと、それに敢えて挑んだ若松孝二の直感の鋭さを思う。
先日、フランスの「ルモンド」紙が、カンヌで上映された本作について
「失敗したクーデター、失敗した映画」という見出しで
記事を書いていた。
http://www.lemonde.fr/cgi-bin/ACHATS/acheter.cgi?offre=ARCHIVES&type_item=ART_ARCH_30J&objet_id=1193851&xtmc=wakamatsu&xtcr=1
三島由紀夫なる偉大な人物を映像として表現することに
巨匠のワカマツが挑んだが、三島という人物の極めて複雑な部分までは
踏み込めなかった、という辛口の記事だという。
しかし、そうした指摘の随所から感じるのは
「巨匠・ワカマツ」が描く人間像や時代像に対する
ヨーロッパにおける期待度の高さ、要求度の高さである。
そして、この作品への注目度の高さであり、
並外れた期待度の高さである。
カンヌでの一般上映の際、巨大ホールが満員になった事からも理解できる。
そして、上映後のスタンディングオベーションにも、
メジャーの後押しも何もなく、たった一人でこのテーマと格闘し
作品を作り上げたワカマツへの惜しみない賞賛の眼差しがあった。
極めて複雑に理解されてきた
知の巨人とも言える三島由紀夫なる人物を1つの映画として
表現するということが、いかに大きな挑戦だったのか、ということだ。
さらに、評論家やインテリの専門家たちが
複雑に分析してきた事象について、
若松孝二という、極めて感覚的で直観的な芸術家が
どのようにえぐり取り、取捨選択していったのか、ということだ。
<三島と時代>のカオスの中に、若松孝二はぐいっと手を突っ込み
己の視点で、一つの核を探り出し、純化したのである。

 監督は、舞台挨拶や記者会見の場でも何度か口にしていた。
「僕は、自分のカネで、自分の好きなように
 撮りたいものを撮っているので、
 褒められようと、けなされようと、全く関係ないんです」
50年に及ぶ監督人生の中、貫いてきた信念である。
いずれにしても、
その真っ向勝負を見届けようと、劇場に集まってくださり
手を堅く握りしめてスクリーンを見つめてくださる
観客の皆さんだけが、それぞれの答えを見つけるはずである。

今週末は、若松監督、井浦新とともに、森田必勝役の満島真之介も沖縄にて舞台挨拶。
その後、続けて、佐賀、福岡へ回る。

2012年6月2日土曜日

新しい一日の始まり

本日、全国19のスクリーンにて、
「11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち」が封切りされた。
本当の意味で、作品が一人歩きを始めたのである。
記念すべきこの新しい一日、
テアトル新宿、ユーロスペース(渋谷)、ジャック&ベティ(横浜)と
3つの劇場にて、監督とキャストの舞台挨拶が行われた。
テアトル新宿では、防衛庁の東部総監室に立て籠もった5名全員が
楯の会の制服に身を包んで集結した。

 

 

 

制服には、撮影当時の血糊の汚れがついたまま。
久しぶりに袖を通すと、撮影の時の生々しい記憶が蘇ってくる、とキャストたちは言う。
しかし、撮影中に存在していた、猛々しくも繊細な若者たちの面影はそこにはない。
バルコニーの上で絶叫していた三島由紀夫の面影もない。
今を生きる彼らの顔がそこにある。
しかし、彼らが心を削るようにして表現した、三島由紀夫や森田必勝らは
確かにスクリーンの中でいきいきと息づいているのだ。
そして、彼らがいきいきと生きていた、そのスクリーンの世界は
もはや映画を観に来てくださったお客様一人一人のものなのだと実感する。
壇上に並んだキャストと監督たちは
それぞれの言葉で、作品への思いを語り、
来場してくださった皆さまへの感謝の気持ちを語った。
上映後の舞台挨拶では、客席から質問の声も。
三島を演じた井浦新は、その現場について聞かれ
こう語った。
「三島さんという強烈な存在をどう演じるのか。
 最初はプレッシャー以外の何ものでもなかったが、
 しかし、ひとたび現場に入れば、キャストスタッフ全員で
 若松監督にくらいついていくしかなかった」
三島との共通点について聞かれると、
「イデオロギー的な部分では、理解しかねる部分も当然あったが
 しかし、日本の伝統的なものを愛し、文化を慈しむという
 その感性は、自分と非常に共通した部分がある」と語った。
本作が映画初出演という森田必勝役の満島真之介は、
「25歳の若さで腹を切るという精神は、
 一体どのようなものなのか、本当に最初は見当もつかなかった。
 でも、日々、これまで自分が出会ってきた人、経験してきた物事を思い出しながら
 監督にめちゃくちゃに怒られながら、心が折れないように、
 精一杯、新さんの背中を見つめて、ついていく現場だった。
 でも、今、スクリーンを見ながら、あらゆる事が腑に落ちた。
 時代は変われど、若い人間が持つ爆発的なエネルギーは変わらないはず。
 今日から、自分も新しい一歩を歩いて行きたい」
若松監督は、若い俳優たちから気迫の演技を引き出した演出について聞かれ、
「何も特別な事はしてないんですよ。
 再現ドラマを作るつもりはないですから。
 新君の三島、満島君の森田、それぞれの、古賀、小賀、小川を
 やってくれればいいのであって。
 それでも、カンヌの上映では、1000名以上の入る大劇場が超満員で
 面白くなければ次々とお客が出て行く映画祭で、
 最後まで誰も出て行かずに見てくれて、最後は拍手が起きたので
 ああ、ちゃんと満足してもらえるものができたんだな、と思ってる。
 みんなも、面白かったと思ったら、ぜひ、まわりの人に勧めてください。
 僕も、まだもう少し映画を撮りたいんで、そのために、なんとかお願いします」
と、ユーモアを交えて語り、会場の笑いを誘っていた。
テアトル新宿に続き、ユーロスペースでの舞台挨拶を終え、
そして、夕方には、横浜のジャック&ベティへ。

舞台挨拶を待つ間は、公式ブックにサインを書き続ける。
各劇場で、公式ブックは飛ぶように売れた。
監督や井浦、満島らのインタビューには、今回の撮影にまつわる
様々な興味深いエピソードも満載の公式ブック。
三島に関する各界の人々の寄稿も読み応えあり。
ぜひ、お手にとって頂きたい。

最後にジャック&ベティで2回の舞台挨拶を終え、
目まぐるしかった初日を終えた。

ちょうど1年ちょっと前に、怒涛のロケを終えた、あの作品が
こうして、ヨチヨチ歩きではあるけれど、19のスクリーンで
一人歩きを始めたのだ。
たくさんの人たちの手を借りて、1つの映画作品が、この世の中に誕生した
その新しい一日を、共に過ごしてくださった皆さま、ありがとうございました。

2012年6月1日金曜日

いよいよ明日、公開です!

いよいよ明日、公開です!

カンヌから戻って来た若松監督。
連日の取材に疲労困憊、という状態だったが、
日本に戻って、一息つく間もなく
いよいよ明日、「11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち」が
全国で公開される。
明日は、テアトル新宿、渋谷ユーロスペース、
そして横浜ジャック&ベティで、監督とキャストの舞台挨拶が行われる。
つい一週間前に、カンヌの大舞台で
世界に向かってその存在感を発揮した作品が、
日本の各地で、各劇場のスクリーンにて
たくさんの方たちと新たに出会う瞬間がやってくる。
本日午後、雨の中、テアトル新宿へ足を運ぶ。
思い出すのは4年前。
この劇場の前にこの看板が立った時のこと。


監督が命がけで撮ったこの作品が、いよいよ新宿で
たくさんの人たちに目撃されるのだ、と
感無量で看板を見つめていたのが、ついこの前の事のようだ。
そして明日、若松孝二が描く、もう一つの1960年代が
テアトル新宿をはじめ、日本各地の劇場で、封切りされる。

その瞬間を、誰よりも心待ちにし、そして誰よりも胸をドキドキさせているのは
他ならぬ、身銭を切って身体を張って作品を産み落とした若松監督だろう。
若松監督は、それこそ、命を削りながら、作品を作り続けている。
常に、時代と対峙し、自分の言葉で映像を紡ごうともがいている。
鈴木邦男氏の言葉ではないが
「日本に、若松孝二という映画監督がいて良かった」
と、思うのだ。
明日、皆さまと劇場でお会いできることを、心より願いつつ・・!