2013年10月15日火曜日

若松監督に再会するディープな一週間、続行中。

若松孝二追悼”時代を撃ち続けた男、人生最後の5本”特集として
「千年の愉楽」と近作2本だて続行中の下高井戸シネマ。
13日(日)は『キャタピラー』との2本立て。
上映後には、若松監督の熱烈ラブコールに応えて
近作2本の主演を果たした女優、寺島しのぶさんが、
共演者の大西信満さん、カメラマン辻智彦さんとともにトークに登壇した。

「下高井戸シネマは初めてですが、監督ゆかりの劇場と聞いて
 足を運ばせて頂きました。私の中では、1年前から時が止まっているようですが…」
と寺島さんが冒頭の挨拶を述べ、大西さんも
「ここは、監督と何度も一緒に足を運んだ思い出のある劇場です」と
しんみりとトークが始まった……と思いきや、
「(カメラマン)辻さんがどうしても監督の作品をやりたくて、
 一杯も飲まずに朝まで飲み屋につきあって監督を落とした」
というエピソードが、実は監督の調子のよい思い込みだった事が判明し
「劇映画もやった事のない僕には思いも寄らない事で
 監督はドキュメンタリーのカメラマンを探していたみたいで
 いきなり『お前、やれ』と。嬉しかったですが、それはびっくりしましたよ」と。
さらには、レバノンで監督とともに拘束された当時のエピソードまで飛び出した。
「最初は強気でいたけれども、手錠を外され、靴ひもを取れ、と言われた時は、
 一気に元気がなくなり、しょぼーんとしてました。
 拘置所経験のある監督は、紐を取れ、という事が
 何を意味するか(ブタ箱の中で自殺しないように、という意味)分かったんですね」
当時は、監督から「入院したから、チョンジュ映画祭には一人で行ってくれ」
と連絡をもらって一人韓国入りしていた大西さんは
ヤフーニュースで「若松孝二レバノンで拘束」というニュースを見て
びっくり仰天したという。
笑いとともに次から次へと飛び出すエピソード。
『キャタピラー』では、錯乱状態になった久蔵が頭を畳にうちつけて
血まみれになるシーンがある。
あの血は、じつは仕込みではなく、大西さん自身の流血である。
芝居の中で、自分の頭を激しく打ち付け、頭が割れてしまったのだ。
若松組らしい、あの時のエピソードにも花が咲いた。
カット割りもしない、仕込みをするそぶりもない。
でも、ト書きには、血まみれの久蔵と書いてある。
どうしよう…と思い悩んだ末の大西さんの身体を張った演技であったが、
カットがかかった瞬間、寺島さんが大西さんを叱りつけたという。
「私もあの時、どこかハイテンションになって、尋常じゃなくなっていたから
 大西君を怒ったなんて、覚えていない。
 でも、血がどんどん出てくるし、監督はカットかけないでずっと回しているし
 もう、どうしようどうしようって…」
最後は頭の傷をホチキスで簡易止めしてクランクアップまで耐えた大西さん。
実は『実録・連合赤軍』の現場でも最終日に足首をひどく捻挫して病院に運ばれた。
その時、監督が怒ったのは、自分の身体を心配してではなく
「保険の掛け金が次回から上がっちゃうだろ!って(笑)」
カネに厳しい若松監督だったが、監督として作品を引き受けるのみならず
「自由に自分で表現を続けるためには、カネが必要だ、という事。
 ものをつくる、という事において、その部分は見えづらいけれども
 その見えづらい部分でも闘っている人だったと思う」と
辻さんが監督の事を振り返った。
寺島さんも「和やかな『キャタピラー』の打ち上げの時に
ホテル代が高いって、いきなり制作の人を怒りだした若松監督。
普通、俳優の前では言わないような事だけど、
私がそこにいる事すら気づかないほど必死なんです。
あの瞬間の監督は、もうプロデューサーですよね。
ものをつくるって、こういう事なんだなあって思いました」
「実は、あれを見て制作の人を気の毒に思ったホテル側が
 少し値引きしてくれたんですよ。
 だから、監督、半分本気、半分はホテル向けの芝居だったかも」(辻さん)
語り始めると、話は尽きない。
どこまでもお茶目で我がままでふざけながら本気になって
いつも作品づくりの事ばかり考えていた若松監督。
そして同じ日、函館では、
赤煉瓦倉庫のスクリーンでも『千年の愉楽』追悼上映が。
ゲストの篠原勝之さんが、若松監督との北海道の旅の事、
映画の事、ものづくりの事、作品の事、飲み屋の事
なんと一日に4回ものトークに立ってくださっていた。
そして本日の下高井戸シネマ。
「11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち」との2本だて。
トークゲストは、森田必勝を演じた満島真之介さんと
自衛隊の富士学校校長を演じた篠原勝之さん。
毎回、毎回、出色のトークが繰り広げられる。
本日は、どのようなエピソードが飛び出すか。
悪天候になりそうですが、どうぞぜひ、劇場に足をお運びください。
若松監督の葬儀の時。
思えば、お通夜の日は午後から雷鳴轟く嵐の日だった。
あれから、1年なのである。

2013年10月13日日曜日

下高井戸シネマにて追悼上映スタート!

10月12日(土)下高井戸シネマにて
特集 若松孝二監督一周忌特別企画
"時代を撃ち続けた表現者 人生最後の5本"
「千年の愉楽」と近作の二本立て上映がスタートした。

初日の昨夜は「海燕ホテル・ブルー」との2本だて。
「海燕」のヒロインかつ「千年」で遊女蘭子を演じた片山瞳さん、
「海燕」で仲間を裏切った過去を持つ男を演じたウダタカキさん、
「千年の愉楽」で後家の初枝を演じた安部智凛さんの3名が
上映後トークを行った。

実はウダさんと安部さんは、「実録・連合赤軍」で
内縁上の夫婦、吉野雅邦さんと金子みちよさんを演じている事もあり
気心の知れた同志との再会、事前の打ち合わせも何もせず
いきなり壇上にて、3人のトークセッションがスタートした。

「海燕」ではヒロインとしてとても大切に扱われたという片山さん
一方、初の若松組の現場で、撮影初日から怒られ続けて
役を降ろされるのではないか、と追いつめられたという安部さん。
ウダさんも、女優2人から若松監督のエピソードや印象を引き出そうと
質問を重ねつつ、自身の体験を語った。
次第に会話は、いかに現場での監督が理不尽だったかというエピソードに花が咲く。

監督の意見に沿って使っていた衣装や髪型や小道具について
2ヶ月以上に及ぶロケの後、クランクアップ直前になって
「かっこつけてこんな色の服着やがって!」
「なんだ、こんな坊ちゃん刈りしやがって!」
「眼鏡でお前の目が見えねえんだよ!なんで眼鏡なんかしてんだよ!」

「ああいうのが、僕は本当にいやだった!」と苦笑しつつ、ウダさんは
「レンセキも三島も、作品となったものを見た時に
 青春映画になっている事を感じて、ものすごい違和感が残ったんです。
 この事を、青春の物語にしてしまっていいのか、と。
 僕自身の中に、それは未だに解消できないものとして残されている。
 それでも、監督は結局、常に、お前らはそれでいいんだ、という事を
 言い続けていたんじゃないか、と。善とか悪とか関係なくて、
 お前らがそれをやりたいと思ったんだったら、それでいいんだ、と
 若い奴らの全面的な理解者であろうとしたんじゃないかと思った」と語った。

「そういう一面もあるし、『海燕』や『千年』では
 監督は母性的なもの、女性へのあこがれや優しさを全面的に描いていて
 それも若松監督だったと思う」と片山さん。
「男だったな、と思うんです。若松さんは。
 理不尽さも含めて、ほおっておけなくなるような男の人でした。
 昨年の釜山映画祭を監督と共に行って、それから1週間後にいなくなってしまった。
 今年も釜山映画祭は、あの時の監督との時間をたどる旅でした」

人生を賭ける程の意気込みで「実録・連合赤軍」から
若松作品に挑み続けて来た安部さんは
監督の死後、その事を乗り越えられずにもがいていた時
共演者から「お前、今は辛くてたまらないだろうけれども
3年は続けろ、それが、若松監督への仁義じゃないか」といわれ
今、自分が投げ出してしまったら若松監督から学んだ事は無になる
それであれば、役者を今は続けて行くべきだと決意した事を明かした。

お客さんになんとか楽しんでもらおうと
3者3様に頑張ったトークは、臨場感たっぷり
聞き手も語り手と一体になってハラハラしたり泣き笑いしたり
あっという間の50分だった。



若松監督がこの場にいたら、決して口からは語られる事のなかった
エピソードの数々が飛び出した。
理不尽で、かんしゃく持ちで、でも、美味しいものを作って食べさせたり
みんなの喜ぶ顔を見るのが大好きだった監督。
思い出す事は美しい話ばかりではない。
笑い話、腹が立った現場でのあの瞬間この瞬間。

それでも、残した作品、私たち一人一人に突きつけた監督の思い
それらを、スクリーンを通して、あるいは作品を共有した人との再会を通して
若松孝二は、昨夜も確かに、あの場にいた。

本日は「キャタピラー」との二本立て。
寺島しのぶさん、大西信満さん、カメラマン辻智彦さんのトークです。
15時20分〜上映スタート。
劇場にて、お待ちしております。

また、本日は函館映画祭主催「若松孝二追悼上映」
赤煉瓦倉庫にて上映中。
トークゲストは若松監督の盟友で北海道出身の
鉄のゲージツ家KUMAさんこと篠原勝之さん。
先ほど、無事、一回目の上映トーク終了しました。
本日、合計4回上映予定です。

若松孝二という人を世界が喪って1年。
若松孝二に託された最後の現場、というような思いを抱え
それぞれの地で一周忌追悼上映が行われています。

2013年9月20日金曜日

10月17日、若松孝二一周忌

10月17日、若松孝二一周忌


10月17日は、下高井戸シネマにて
「千年の愉楽」「メイキング」上映とライブとトーク。
そして、ポレポレ東中野にて、
若松孝二デビュー作「甘い罠」上映とライブとトーク。
どちらの劇場も、ライブとトークは同じゲスト。
ライブは、ジム・オルークさん、渚ようこさん、中村瑞希さん。
トークは、井浦新さん、大西信満さん、辻智彦さん。
ポレポレ東中野のチラシが出来上がった。

若松監督デビュー作「甘い罠」
これまで、「俺が唯一、一人でホンも書いて作った作品だよ。
お巡り殺したら、これが学生たちから大受けで…」と
話にはよく聞いていたけれど、観る機会はなかった。
技術スタッフの方がうんとベテランだから
自分でカットを100枚切り抜いて作ったクラップブックを手に
「次はこのカットでお願いします」って頭を下げながらやったと言っていた。
最初の一歩から、気が遠くなるような小さな一歩一歩を重ね続けて
毀誉褒貶はげしくとも何のそので、作品を作って来たのだなあと思う。
監督の背中が遠いなあと思ってたら、気づくと真横でゆっくり歩いていたり
時々、背後で子どものように遊んでいたりしていたなと思う。
それが、若松孝二の歩んで来た道だったんだなと思う。
これから10月に入ると、文芸坐でのオールナイトや
函館での追悼上映や、名古屋、大阪での上映などが続く。
あっという間に一周忌である。
監督の最後の最後の打ち上げ花火を、きれいにあげて見送ろう。

2013年9月13日金曜日

釜山の地に若松孝二のてのひら

釜山映画祭の季節がやってきた。
昨年、釜山映画祭の開会式の現場から
「ものすっごい大きい規模の映画祭だよ、驚いたよ!」と
監督が興奮した声で電話をかけてきた。
映画祭の最中に監督が手形を押すセレモニーもあり
「11.25自決の日」「海燕ホテル・ブルー」「千年の愉楽」特別上映もあり
マスターズクラスの講演会もあった。

あの時の監督の手形を、葬儀に間に合うように釜山映画祭の方が
持って来てくださったので、青山斎場の一角に置かせて頂いたのだった。
そして、来たる10月2日に釜山国際映画祭広場にその手形が設置されるという。
日々は流れていき、最後の新作の公開も一区切りし
若松孝二という存在は、
関わった一人一人の歴史の中に刻まれた存在として
それぞれに歩み始めた感がある。
10月17日は、若松監督の一周忌である。
その前後に、様々な追悼上映が各地で企画されている。
その一つが、監督が昨年行くはずで、交通事故のために
井浦さんのみの参加となってしまった”函館映画祭”主催の上映会。
10月13日に「千年の愉楽」を終日上映し、ゲストによるトークやサイン会を行う。
■日時:10月13日(日) ①10:00 ②13:00 ③16:00 ④19:00
■会場:金森赤レンガ倉庫金森ホール(函館市末広町14-12)
■料金:一般前売 1,000円 (当日1,300円) 前売学生 800円 (当日1,000円)
高校生以下 500円
10月12日から一週間は、下高井戸シネマにて
「千年の愉楽」と、下記日替わり近作の二本立て上映も。
日替わりで、様々なゲストが来てくださる予定。
(ゲストはまだまだ増える予定!)
10月12日「海燕ホテル・ブルー」ゲスト:片山瞳さん、ウダタカキさん、安部智凛さん(予定)
10月13日「キャタピラー」ゲスト:寺島しのぶさん、大西信満さん、辻智彦さん(キャメラマン)
10月14日「実録・連合赤軍」(トークなし)
10月15日「11.25自決の日」ゲスト:篠原勝之さん
10月16日「海燕ホテル・ブルー」ゲスト:片山瞳さん、ウダタカキさん、安部智凛さん(予定)
10月17日「メイキング」ゲスト:井浦新さん、大西信満さん、辻智彦さん 
     「ライブ」ジム・オルークさん、渚ようこさん、中村瑞希さん
10月18日「連合赤軍」と「11.25自決の日」の二本立て ※「千年の愉楽」は17日までです。(トークなし)
命日の17日には「メイキング」上映と
3人のアーティストのライブと若松組2人のトークと盛りだくさん。
さらにその日は、ポレポレ東中野にてレイトイベントとして、
21時10分〜若松監督デビュー作「甘い罠」上映と
下高井戸シネマに引き続いての
ジムさん、渚さん、中村さんミニライブ、井浦さん大西さんミニトークも企画。
続く18日は名古屋シネマスコーレにて、19日は大阪第七藝術劇場にて、
それぞれ「千年の愉楽」「連合赤軍」「キャタピラー」
「11.25自決の日」「海燕」などを上映し、
井浦さんと大西さんがトークにかけつけてくださる。
この1年を言葉にするのは、なかなか難しい事であるが
それぞれが監督を偲びつつ、それぞれの現場で走って来た1年を経て
若松孝二デビュー作を見ながら、スクリーンでなにものかに出会えるような
そんなイベントにできたらと願っている。
各イベントについて、
改めて詳細を告知していく予定です。

2013年8月19日月曜日

満席の新・文芸坐、熱気と言葉と

17日(土)、ギラギラと真夏の太陽が照りつける池袋。
「終戦の日によせて 社会派・反戦映画特集」が組まれた新・文芸坐にて
「実録・連合赤軍」と「11.25自決の日」二本立て上映が終日行われました。
15時20分、『実録・連合赤軍』上映後、トークイベント開始。
坂東國男を演じた大西信満さんと『11.25自決の日』で
森田必勝を演じた満島真之介さんが壇上へ。
この2人のタッグは久しぶりです。
2人とも、映画やドラマなど、様々な現場で忙しく活躍している中
久しぶりの若松作品の現場へと、駆けつけてくれたのでした。

「僕は沖縄出身で、同年代の人たちの中では、
 恐らく、戦争について考えていた方だったと思うけれども
 それでも、年々、年を重ねるにつれて、自分の中で腑に落ちて行くものがある。
 今こそ、若松監督と話をしたいと思うけれども、かなわない思い。
 そうであるならば、若松監督の思いを体現したものとして
 自分が語って行こうと思っています」と冒頭に満島さん。
森田必勝として生きた若松組の現場を語るのは久しぶりだといいます。
「若松監督は、森田役にはこだわり続けて、ずっといろんな人と会っていたよね。
 そんな中で、舞台経験しかない真之介を一目見て決めたのは、
 未知数ながら、きっと彼の中にあるまっすぐさ、ひたむきさを感じ取ったのでは」と
『11.25自決の日』で倉持清役を演じながら、
 現場で満島さんを支えていた大西さんが語りました。
「何やっても、お前怒られてたもんな」
「そうですね。
 私服のまま朝食を食べてたら『なんで衣装着てないんだ!たるんでるぞ!』と怒られ
 翌朝、しっかり制服着て食べてたら『なに衣装着てメシ食ってるんだ!
 チャラチャラしやがって!』と(笑)」
それは、若松監督の計算ずくの演出だったと大西さんが語りました。
「人のいい真之介をぶちこわして、殺気立った目を引き出す。
 人間の芯の部分をむき出しにする。連合赤軍の時もそうだった。
 俺だけなぜか吊るし上げ状態。日々総括。
 監督が坂東さんに直接とある場所で会って話を聞いているんですね。
 その思いが強くあるからこそ、より演者に強いエネルギーで向かってくる」
満島さんは、『11.25自決の日』の現場に入る前、若松作品と出会った。
「早稲田松竹で『レンセキ』と『キャタピラー』二本立て観てたんです。
 うわー、生半可な気持ちでは、ここには追いつけない!と思った。
 連赤の現場がうらやましくもあり、あの場にいなくて良かった、とも思った」
人間が人間に対峙する。
「演出家」と「演者」を越えた火花が飛び散る。
そんな若松組の現場の空気が思い出されるトークでした。
会場からは「森田と三島の関係、師弟を越えた、エロティックな部分など
映像から少し読み取れるところもあったが、監督の演出は?」といった質問も。
「その部分については、若松監督も言及していたけれども
 『俺には、その事はどうでもいいんだよ、あってもなくても、関係ないんだよ』と
 描きたい部分は、『何かを変えたい』という思いの部分なんだ、という
 監督の強い決意がありました」と満島さんが答えた。
また、戦中に次男として生まれたというある男性は
「自分の名前は、天皇のために立派に死ぬ、という親の願いを込めて
 付けられました。長男は死んだら困るけど、次男はお国のために、という。
 そういう時代があったのです」と発言してくださいました。
大西さんは「右とか左とかではなく、監督は、
何かに挑んだ若者たちの存在を単なる犯罪とかテロのようなものとして
歴史の暗部に押し込める事への強い憤りがあった。
その存在を描くのが、目撃者としての自分の使命だと思ってたと思う。
肉体は滅んでも、作品は残すのだという強い決意だった」と語り
あっという間の40分のトークは終了しました。
今、下北沢トリウッドにて、若松監督が戦争を描いた2作
『裸の影 恐るべき遺産』『キャタピラー』が上映中です。
戦後68年目の夏、若松監督のスクリーンでの吠え声は
今も私たちの耳に響き続けます。

2013年8月17日土曜日

ポレポレ東中野が満員になった夜

昨夜、ポレポレ東中野にて一夜限りに
『裸の影 恐るべき遺産』上映。
上映後には塚本晋也監督のトークが行われる事もあって
きれいに満席となった場内でした。



新作始動で超多忙の中、駆けつけてくださった塚本監督、
「恐ろしい戦争を正攻法に描きながらも、可愛らしいというか
 ああ、好きなんだな、というような、若松監督らしさが
 どうまじめに撮ってもにじみ出てくるような感じがあって
 いいんだ、にじみ出てきちゃって、これでいいんだって
 勇気をもらえましたね」と作品についての印象を語りました。
ちょっとしたアングルの遊び心、お客さんへのサービス心、
いろいろちりばめつつも、正攻法に初々しく描きながら
やっぱり根底には、戦争の理不尽さへの怒り。

常に怒りが原動力となっていた若松監督らしさは
塚本監督が、若松監督や深作監督、崔監督らとともに中国の映画学校に
文化交流に行ったエピソードの中にも。
中国当局を交えての親睦会の場でも、持論をぶち上げ、
トラブルで『鉄男』が上映できなくなった時には
親分肌を発揮する若松監督なのでした。

塚本監督と若松監督は、作風は全く異なるけれども
「塚本君は玩具の中で遊んでいるみたいなんだよな」と
若松監督が一目置いていた塚本作品の魅力。
「自分の中で、何かムズムズする事があると
 それをメモしておく、というのはありますが、
 そこに、その時代なり社会の状況なりが重ならないと
 なかなか水面下から出てこない、というのがあって。
 それが、ある状況になった時に、ムズムズが映像になっていく」
と自らの作品の源流について塚本監督が語りました。

そして、これまでは自らの頭の中ばかりを突ついて突ついて映像を作ってきたけれど
この人の頭の中を描いてみたい、と塚本監督に思わしめた存在が
Coccoさん、そして生まれたのが「KOTOKO」であった事、
子どもを守らねばならない母親の精神を描きつつ、
折しも起きた震災と原発事故が時代背景となって
見る人に、さらに深い問いを突きつけてくる。
…というような作品を撮り終えた塚本監督が、次に向かうのは?
と、新作について、会場から質問が出ました。
これまでの作品をつくりながらも、内側に温めてた思い
時代状況への危機感も含めて、塚本監督の控えめな言葉の中に
次回作への強い思いが語られました。

若松監督と塚本監督はかつてラジオの対談の中で
若松「俺たちはさ、BOX東中野(ポレポレの前身)に来てくれるような
お客さんを相手に映画を作って行きたいよな」
塚本「映画はぶきっちょに、好きな人は少なくてもいいから
 その人たちだけムチャクチャ好きでいてもらえるようなのをつくりたい」
と語っていたのですが、
その劇場にて、若松監督の初期作品をお客さんとともに観て
若松監督や映画について塚本監督に語って頂く時間を持てた事、
何よりも、終戦記念日の翌日に、「戦争」を描いた作品を通して
再び若松監督に邂逅できた事に、巡り合わせを感じたイベントでした。

作品は、次々と生まれ、そして生まれると、ずっと残っていきます。
「表現に時効はないんだよ」と語り、
「映画は俺の玩具なんだよ」と語った若松監督、
「玩具ったって、こっちは命がけで遊んでんだよ」とも。

本日は、新・文芸坐にて「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」と
「11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち」の二本立てが続いてます。
15時20分からは、大西信満さんと満島真之介さんがトークに駆けつけます。

2013年8月14日水曜日

金曜はポレポレ、土曜は新・文芸坐にて!


お盆です。
若松監督の新盆です。
「あまちゃん」で音楽を担当されている大友良英さんが
ウェブ媒体でのロングインタビューで
「いま、表現をする事」について語ってました。
http://blogos.com/article/67859/?axis=&p=4
(以下一部抜粋)
>それは現実をごまかすようなことじゃなくて、
>ちゃんと目を開きながら厳しい現実を生き抜いていけるような、
>強い批評的な力も持ちながら、でも決して
>「ご立派なこと」にはならないようななにかじゃなくちゃ…(以下略)
大友さんといえば、ジム・オルークさんとともに
何度も、「実録・連合赤軍」オールナイトイベントに
ライブ出演してくださったのですが、
今や、「あまちゃん」によって、お茶の間にも愛される音楽家です。
たくさんの空洞を抱えながら、表現は続いていくのだと
猛暑のコンクリートジャングルの中で、思うのです。
今週末、「追悼を越えて」ゆくイベント相次ぎます。
「若松孝二と時代の表現者たち vol.3」
8月16日(金)19時スタート 1500円均一
ポレポレ東中野にて(東京都中野区東中野4丁目4−1)
「恐るべき遺産 裸の影」上映と塚本晋也監督によるトーク

監督デビューからわずか1年後の1964年に作成した
若松監督の初期社会派作品。
「原爆の事をやりたかったんだけど、高校生たちがすっぽんぽんになったって
 そんな関係ない事で騒がれたんだよ」と、監督からよく話には聞いていたけれど
長年観る機会のなかった作品が、このたび、デジタル化によって上映可能に。
原爆症に悩む少女の姿から、戦後の日本を描き出します。

理屈ではなく、直感で、テーマに突っ込んで行った若松監督。
方や、こだわりの映像表現でファンを魅了し続ける塚本晋也監督。

作品をつくらずにはいられない自分の事を
若松監督はよく「玩具が欲しくてだだをこねる子どもと同じ」と語り、
そして、「塚本君も、自分の玩具の中で楽しそうに遊んでいるね」と語っていましたが
そんな2人のコラボレーションを、若松監督の新盆に実現できる事が嬉しいのです。
どんなお話が飛び出すでしょう。

そして、翌17日には、池袋の新・文芸坐にて。
8月17日(土)新文芸坐にて
終戦の日によせて 反戦・社会派映画特集 
一般1300円/学生1200円/シニア1000円/ラスト1本800円
http://www.shin-bungeiza.com/program.html#d0815
「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」
「11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち」二本立て上映。
15時20分〜 大西信満さん(「実録・連合赤軍」坂東國男役/「11.25」倉持清役)
       満島真之介さん(「11.25自決の日」森田必勝役)
トークイベントを行います。

 
若松組のこのお2人が揃っての登壇は久しぶりです。
あの、暑かった2年前のロケを思い出します。
疾走する若松監督の熱と毒に耐えて耐えて耐え続けて生まれた森田必勝を。

大変濃い2本立てですが、敗戦の日によせて、という特集プログラムの中の1日です。
ぜひ、新・文芸坐にお越し下さい。