2月9日朝、代々木駅前を出発したロケバスの車内で、若松組クランクイン恒例となった、赤飯のおにぎりが配られた。バスは一路、冬の新潟へ。車内には、程よい緊張がみなぎっていた。
そして、時折粉雪の舞う北国の刑務所前で、ファーストカットの撮影が始まった。灰色のコンクリートの横を歩く、一人の男性の姿。五年の刑期を終えて出所してきたばかりだ。
男を演じるのは、「実録・連合赤軍」で森恒夫氏を演じた、地曵豪さん。
船戸与一原作の「ホテル海燕ブルー」が、若松孝二によって、新たに生まれ変わっていく。
その日予定していた撮影は、あっという間に終了。監督の早撮りは健在だ。目の前の役者と風景を、次々にキャメラで切り取っていく。
それにしても、北国の凍てついた風景と監督は、よく似合う。人の心の乾きや熱さを、その風景の中で、巧みに映像にしていく。
四年前の、連合赤軍のロケを思い出した。
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